生命保険大手の日本生命保険相互会社(以下、日本生命)は、強みであるリアルチャネル(営業職員)でのサービス提供に加え、LINEヤフーのサービスを活用したDX(デジタル変革)により、保険営業のあり方を根本から変えてきました。従来の担当者の経験やスキル頼みだけではなく、顧客データの収集・分析による再現性の高い営業活動へと改革。「日本生命136年の歴史の中で、初めて営業の科学に成功した」という同社の挑戦とYahoo!広告オーディエンス連携β版を活用したLINE公式アカウントのメッセージ配信、その成果ついて営業教育部部長の渡部祐士氏(以下、渡部氏)に話を聞きました。
- 営業職員の属人的なスキル依存から脱却し、顧客データを一元管理することで、データを基にした効率的で再現性の高い営業活動を実現したい
- 顧客がLINE公式アカウントの友だち追加やアンケート記入をスムーズにできるよう、MEET(NFCツール)を活用。これにより顧客情報などを一元管理できる仕組みを構築
- キャンペーン情報をLINE公式アカウントの友だちにメッセージ配信し、応募条件としてアンケート回答を設定。得た情報を基に営業職員がコンタクト
- Yahoo!広告の検索、閲覧、購買データ(Yahoo!広告オーディエンス連携β版)を活用し、ライフステージの大きな変化である結婚予兆セグメントを設定。該当する友だちにメッセージを配信
- LINE公式アカウントでメッセージを配信し、4日間で約17.7万件の回答を収集。そのデータを基に営業職員が迅速に対応し、成約率は新規顧客が2.6倍、既契約者は1.8倍に
- Yahoo!広告の「結婚予兆セグメント」を活用したメッセージ配信では、対象者の約10%がクリックし、うち約7603名(7.5%)がキャンペーンに応募
- Yahoo!広告のデータを活用し、営業職員が顧客の結婚状況やライフイベントを把握して営業することで、連絡先のみ把握している顧客と比較して成約率が10倍以上に向上
長年の課題“顧客情報の属人化”をLINEヤフーのサービスでDX
1889年創業の日本生命は、保有契約数・保険料等収入ともに国内最大の生命保険会社です。同社の保険事業の土台となっているのが、全国100支社に在籍する約5万名の営業職員で、保険料等収入ベースで営業職員チャネルが約66%を占めています。

保険料等収入ベース
チャネル割合は2022年度 日本生命、大樹生命、ニッセイ・ウェルス生命、はなさく生命の合計値
お客様数は国内グループ各社の個人保険、個人年金保険等にご加入いただいた被保険者数、および満期保険金等を据え置いたお客様数と、当社を通じてあいおいニッセイ同和損害保険の契約に加入いただいたお客様数の合計
「死亡や重度疾病・介護など、“万が一の備え”としての保険商品を販売するには、やはり営業職員による対面コミュニケーションが欠かせません。お客さまとの対話を通じて保険の必要性を感じていただいて、契約まで運んでいく。潜在的なニーズを掘り起こすことができる営業職員チャネルの重要性は、価値観の多様化した時代にあって、ますます高まってきていると感じています」
しかしその一方で、同社には「顧客情報が営業職員に属人化してしまう」という長年の課題がありました。さらに各営業職員の営業活動のプロセスを会社として把握できず、効率的な営業活動のサポートができないことも問題点に浮上していました。
「端的に言えば、営業職員個人のスキルやコミュニケーション能力に大きく依存したビジネスモデルでした。しかし、人口減少が進む時代において、業績を伸ばしていくためには、デジタルツールやデータを活用し、会社が積極的に営業活動をサポートする必要があると判断しました」

そこで同社はまずコロナ禍でお客様に会いづらくなった、2020年4月にメールの代替ツールとしてLINE WORKSを導入。アポイントの日程調整やキャンペーン案内の送付など、LINE WORKSのチャット機能を使って営業職員が、顧客一人ひとりとやり取りする体制にしました。これにより、営業職員と顧客とのコミュニケーションが活性化し、データとして蓄積されるようになりました。
「さらに2023年8月にLINE公式アカウントを導入したことで、本部によるメッセージの一斉送信が可能になりました。同時に、①紙ベースのアナログで収集していた顧客情報、②営業職員がLINE WORKSのやり取りで個別に取得した顧客情報、③LINE公式アカウント経由で取集した顧客情報(アンケートなど)の3つの情報を紐づけて、一元管理するシステムを構築。これにより、解像度の高いお客さま情報が会社にストックされ、営業活動やLINE公式アカウントのメッセージ配信に活用できるようになりました。当社のリアルとデジタルを融合した戦略において、非常に大きなターニングポイントになったと思います」

利用データはユーザーの許諾済みデータのみです
わずか1秒で友だち追加完了 NFCで効率的に顧客情報を把握
日本生命のLINE公式アカウントを軸としたDXにおいて、もう一つ、特筆すべき取り組みがあります。それが「NFC(近距離無線通信)を活用した情報収集の簡易化」です。MEETという下敷き型のNFC情報収集ツールを用いて、ワンタッチでLINE WORKSとLINE公式アカウントの友だち追加、そしてキャンペーン応募ができるシステムを導入しました。

実際、MEETの導入により、営業職員経由のLINE公式アカウントの友だち追加は、わずか1年で266万人を超えました。さらに自然流入した友だちのブロック率は「74.9%」であるのに対し、営業職員経由で得られた友だちは「5.2%」と驚くほど低い数字がでています。

2024年10月末時点:日本生命調べ
「友だち全体の内訳は、既契約者が78%、未契約の見込み層が22%です。見込み層の内訳を見ると、約40%が生命保険のメインターゲットである30代以下の若年層や保障検討層に該当します。この20~30代に対して、いかに効果的なアプローチを行うかがカギとなります」
効果的なアプローチをするために、2024年3月には、営業職員が活用するPCの「コンサルティング機能」を一新。これにより、一元化されたデータを基にAIが「顧客世帯に最適な保険」を顧客スコアに基づいてアドバイスする仕組みを導入、高い契約率につながっています。
「社内では“日本生命136年の歴史の中で、初めて営業が科学された”との評価の声も上がっています。今回、データに基づき営業職員の最適な行動を促すことで、職務難易度の低下や成約率の向上を実現することができ、長年の課題が解消されつつあります」
LINEヤフーのデータ活用で成約率大幅アップ!
では、LINE公式アカウントの運用には、データをどのように活用しているのでしょうか? 同社では、毎月1回LINE公式アカウントでキャンペーン情報を配信しており、キャンペーンの応募条件にアンケート回答を設定しています。
「直近では、“がん検診の受診調査”や“資産形成に対する意識調査”などのアンケートを配信し、わずか4日間で約17.7万件ものアンケート回答を収集することができました。友だち数に比例するように、毎月キャンペーンの応募者も増加しています。繰り返しになりますが、顧客情報は一元管理されているため、キャンペーン応募時のアンケート結果を即座に担当の営業職員にフィードバックして営業コンサルティングに活用できます」
また、「既契約者、新規顧客ともにキャンペーンの参加回数が多いほど、成約率が上がる」というデータも明らかになっています。

2023年8月〜2024年1月連月の配信顧客の応募回数・返信・成果を集計
「営業職員が短期間で何度もお客さまとアポイントを取ることは難しいのですが、LINE公式アカウントであれば、メッセージ配信を通じて継続的な顧客接点を確保できます。このキャンペーンの応募回数と成約率の相関関係によって、保険商品においてもデジタルナーチャリングが可能であることを証明できたと思います。
さらに、“キャンペーン応募直後に営業職員が直接お客さまにコンタクトすることで、成約率が高まる”というデータも証明されました。そのため、管理者層による営業職員のマネジメントに、“キャンペーン応募者へのスピード感ある対応”を組み込んでいます」

2024年10月時点:日本生命調べ
そして最近、新たな取り組みとして、同社はYahoo!広告オーディエンス連携β版のデータを基にメッセージ配信を始めました。
「お客さまの結婚や出産、転職といったライフステージの変化は、保険のコンサルティングを行ううえで最も重要な情報です。しかし、これまでは、こうした有益な情報を効率的に把握するすべがありませんでした。そこで今回、LINEヤフー社が保有する、検索や閲覧、購買などWeb上の行動データを元に分析し、推計データとしてメッセージ配信への活用を始めました。具体的には、“これから結婚しそう”というお客さま(結婚予兆セグメント)に限定してキャンペーン告知を行い、アンケートに回答いただくことで“結婚に関する正確な情報”を把握するという取り組みです」
10万名の配信に対し、7603名からアンケートを回収することに成功し、以下のような結果が得られました。

2024年9月時点:日本生命調べ
「この結果を営業活動に活用したところ、3カ月で約240件の成約につながりました。中にはアポイント取得から2週間で成約にいたった例もあり、通常の営業活動よりも成約率が10倍以上高いという分析結果も出ています。行動データの有効活用によって見込み客の優先順位をつけることでき、営業活動の効率化が実現しました。LINEヤフー社のセグメントは、保険業界に限らず、さまざまな業界でも活用できるのではないかと思います」

2024年10月時点:日本生命調べ
最後に、今後の展望について伺いました。
「結婚予兆セグメント以外にも、さまざまなセグメントを活用したメッセージ配信にチャレンジしていきたいですね。また、LINE公式アカウントを活用してお客さまの利便性を高め、関係性が自然と深まっていくような、いわばオートナーチャリングな仕組みにまで発展させていきたいと思います。今後もLINEヤフー社とともに職務難易度の低下や労働生産性の向上を図り、日本生命、営業職員、お客さまの三者が幸せになれるよう、さらに取り組みを加速させていきます。ご期待ください」

企業名 | 日本生命保険相互会社 |
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所在地 | 大阪市中央区
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事業内容 | 生命保険業、不随業務・その他の業務
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(公開:2025年2月、取材・文/相澤良晃、写真/慎芝賢)
Yahoo!広告オーディエンス連携はβ版であり、一部のお客さまにのみ提供しています。また、β版のため今後、提供条件・提供機能・提供ルールが変更になる可能性があります
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