茨城県南部に位置するつくばみらい市は、つくばエクスプレス(TX)の開業以降、首都圏へのアクセス向上に伴い人口が増加し、住みやすい都市として発展を続けています。豊かな田園風景と新興住宅地が調和する地域で、子育て世帯を中心に多くの新しい住民が流入しています。また、市内には歴史的な寺社や文化財が点在し、地域の伝統と新しい街づくりが共存していることも特徴です。市では、行政サービスのデジタル化や移住・定住促進に取り組み、市民が安心して暮らせる環境づくりを推進しています。特に近年は、LINEを活用した情報発信やオンライン手続きを整備し、利便性の高い行政サービスの提供に力を入れています。
LINE 公的個人認証サービス(JPKI)を採用した理由を教えてください
つくばみらい市では、物価高騰による家計負担を軽減するため、19歳から64歳の市民を対象にデジタルギフト(2,500円分)を支給する「デジタルライフ応援事業」を開始しました。本事業では郵送通知による「デジタルギフトID」の配布を行う一方で、申請手続きはできる限り簡便化し、市民の負担を最小限にする必要がありました。

その解決策として採用したのが、LINE 公的個人認証サービス(JPKI)です。普段使い慣れたLINE上で本人確認を完結でき、別アプリのインストールも不要である点が大きな決め手となりました。また、本人確認の自動化により、住民の利便性向上と職員の事務負担軽減を両立できると判断し、LINEを活用したワンストップ申請の実現に踏み切りました。

導入までの経緯と運用の工夫を教えてください
導入検討においては、まず庁内で「申請の簡略化」「本人確認の確実性」「業務効率化」という3つの目標を共有しました。既存のLINE公式アカウントを活用することで、市民が新たな操作を覚える必要がなく、スムーズにオンライン申請へ移行できる点も重要なポイントでした。
システム構築では、先行自治体の導入実績をもつベンダーと連携し、つくばみらい市の事務フローに合わせた迅速なカスタマイズを実現しました。構築期間は短期間でありながら、市民向け案内、LINEからの画面遷移、JPKI認証フロー、ギフトURL送付まで一連の動線が分かりやすくなるよう調整を重ねました。
さらに、スマホ操作に不慣れな方に向けて、庁舎に「サポート窓口」を設置。窓口・Web申請・LINEからの申請の3つの手段を用意するなど、多様な市民が取り残されない運用体制を整備しました。
ご利用いただいた住民の反応を教えてください
住民からは、「LINEで簡単に申請できた」「仕事の合間にスマホで手続きできて便利」「市役所に行く必要がなくなり助かった」といった声が多く寄せられました。

特に、若年層からの評価が高く、これまで40代が中心だった友だち層が拡大し、事業開始前(約4,000人)から開始直後(約9,300人)へと増加、12月16日現在では約21,400人へと約5.3倍の増加を記録しました。

また、「手続き後すぐに申込完了通知が届いた」「メールで届くギフトも管理しやすい」など、デジタル施策としてのユーザビリティが高く評価されています。
職員の反応を教えてください
職員からは「本人確認の負担が大幅に減った」「紙申請のような書類不備対応がほとんどない」「進捗管理がしやすくなった」といった声が上がりました。

特に、JPKIによる本人確認の自動化は効果が大きく、64%の申請者がJPKIを活用したことで、目視による確認作業が大幅に削減されました。また、申請方法を複数用意したことで窓口対応が分散し、混雑緩和にもつながりました。
事務処理が効率化された結果、職員が他の業務に充てられる時間が増え、市としての行政サービス全体の質向上にも寄与しています。

今後の展望・提言
つくばみらい市では、今回の取り組みによってLINEとJPKIを組み合わせた「ワンストップ申請」が市民にとって高い利便性を提供できることが確認できました。今後は、給付金事務だけでなく、日常的な行政手続きにも同様の仕組みを展開し、「行かなくても済む窓口」「書かなくても済む申請」の実現を目指していきます。
また、他の自治体へのアドバイスとしては、まずは市民が恩恵を実感しやすい分野からデジタル化に着手し、成功体験を積み重ねることが重要だと考えています。LINEを活用したデジタル施策は、住民サービスの向上だけでなく、自治体全体のDXを推進する基盤づくりにもつながります。
ありがとうございました