居酒屋や定食屋、カレー専門店など、さまざまな形態の飲食店を運営している株式会社Dazy(以下、Dazy)は、2023年5月にLINE公式アカウントを開設。2024年7月からはモバイルオーダーシステム(店内注文)をそなえた「ダイニー」のLINEミニアプリを導入しました。その結果、LINE公式アカウントの友だち数が大幅に増え、再来店率や顧客単価も向上しています。さらにアンケートデータを用いて顧客満足度の向上にも成功したという同社の取り組みや経営戦略について、代表取締役・林 龍男氏(以下、林氏)に話を聞きました。
- ユーザーの再来店を促したい
- 再来店までの期間を短縮したい
- より多くのリピーターを集客したい
- ユーザーに直接再来店を促せるツールとして、2023年5月にLINE公式アカウントを導入
- モバイルオーダーシステム「ダイニー」のLINEミニアプリを2024年7月に全店舗導入し、注文時にLINE公式アカウントの友だち追加を促進
- 来店翌日にアンケートを自動配信し、ユーザーの声を基に店舗運営を改善
- 再来店までの平均日数より少し前にユーザーにクーポンを配信、来店スパンを短縮
- リピーター率・顧客単価の向上を目指し、クーポン内容やLINEミニアプリ内のデザイン面を工夫
- LINEミニアプリの導入後、LINE公式アカウントの友だち数は約5万5,000人(2025年3月時点)にまで増加
- アンケート結果を基に改善を重ねた結果、「再来店意欲」の平均点が77点から90点に上昇
- 再来店を促すメッセージ総配信数のうち7.1%が再来店し、リピートまでの期間も短縮
- 再来店したユーザーの顧客単価が4,980円から5,800円に増加
- リピーターの売り上げ割合が2カ月で7.6%から12.9%に上昇
再来店を促すツールとしてLINE公式アカウントを導入
Dazyは、2021年10月に1店舗目となる「だるま酒場」を東京・神田にオープンしました。林氏の故郷である群馬県の地酒や郷土料理を提供し、連日多くのお客が訪れる活気のある店舗です。人気の高まりを受け、2022年10月には東京・赤坂に2店舗目となる「海老牡蠣酒場だるま」を立ち上げました。新鮮な海老を出汁にくぐらせる「海老しゃぶしゃぶ」が看板商品です。
「私は開業するまで飲食業界の経験がない“飲食ど素人”でしたが、地元のPRをしたいと思い、飲食店を立ち上げました。海老牡蠣酒場だるまの後に定食屋『出汁林』、カレー専門店『月の鐘』など、2025年5月時点で4店舗を経営しています。しかし、オープン当初は立地的な観点でも集客が難しい店舗が多く、いかに多くのお客さまに私たちの店を知っていただき、来店していただくかが課題となっていました」
課題解決のため、同社はデジタルツールを活用した集客に注力します。特に2023年5月からは、インフルエンサーに店舗を紹介してもらうインフルエンサーマーケティングを開始。同時に、LINE公式アカウントを開設しました。
LINE公式アカウントの導入を決めた背景には、海老牡蠣酒場だるまの集客課題がありました。例えば、名物の「海老しゃぶしゃぶ」は一人あたり海老を15尾ほど食べられるメニューのため、一度来店したら満足してしまい、1店舗目の「だるま酒場」ほど頻繁に通うユーザーが多くいないことが分かったのです。
「せめて3カ月後に再び来店していただけたらと考えていたのですが、そのための手法が見つけられていませんでした。海老しゃぶしゃぶは季節ごとに出汁が変わるので、そのタイミングで『もう一度来店しませんか?』と促せる方法を模索していた時、お客さまに直接メッセージを送ることができるLINE公式アカウントを思いついたのです」
LINE公式アカウントの活用やインフルエンサーマーケティングに注力した結果、海老牡蠣酒場だるまの来店時の予約件数は2023年5月時点で405件だったのに対し、同年10月には782件を記録するなど、右肩上がりに伸長していきました。
「飲食店の経営でもっとも大切なのは、『おいしいものを提供する』『接客サービスを良くする』など、本質を磨くことだと考えています。より良い飲食店を目指していく一方で、どのようにデジタルツールを活用するかも意識しているところです。例えばLINE公式アカウントは一度来店していただいたお客さまと1対1でもコミュニケーションがとれるサービスなので、お店に対する満足度が高いお客さまは配信をきっかけに『また来たい』と思ってくださるんですよね。そのため、どれだけLINE公式アカウントの友だちの数を増やして効果的な配信ができるかが、リピーターにつながる一つの方法だと思っています」
来店翌日に配信したアンケート結果を生かし、顧客満足度の向上に成功
DazyはLINE公式アカウント開設当初、LINE公式アカウントの友だち追加を促すため、店内にQRコード付きのPOPを設置していたといいます。運用から1年近くが経過した2024年4月時点のLINE公式アカウントの友だち数は7,000人ほど(3店舗で運用しているLINE公式アカウントの合算数値)。「友だちをもっと増やせないか……」そう思っていた頃、LINEミニアプリでモバイルオーダーシステムを展開している「ダイニー」の営業担当者からコンタクトがありました。
「打ち合わせ時に、かねてより私が『こんな機能があればいいのに』と思っていたことを、実現可能か尋ねてみたんです。例えば、『モバイルオーダーをする際に、一緒にLINE公式アカウントの友だち追加もできるようにしたい』『その人が今まで何回来店したか、以前は何を注文したのか可視化したい』といったことです。すると、驚くことに『全部できますよ』とおっしゃっていただいて。すぐに導入を決め、2024年7月には全ての店舗にダイニーのLINEミニアプリを導入しました」
ダイニーのLINEミニアプリは、ユーザーが来店後に卓上のQRコードを読み込むと、LINEミニアプリが起動し、ユーザーに情報提供の同意を求めます。このとき、すでに「友だち追加」にもチェックが入っている状態のため、ユーザーが同意ボタンをタップすれば、自然な流れでLINE公式アカウントの友だちになることができます。
「もちろん、友だち追加をしなくてもメニューの注文はできます。ですが、友だち追加用のQRコードなどを新たに読み込む必要がないので、お客さまにとっても負担が少なく、自然な流れで追加していただいています」
実際にダイニー導入後、LINE公式アカウントの友だち数は2025年3月時点で約5万5,000人にまで増加しました(4店舗で運用しているLINE公式アカウントの合算数値)。
LINE公式アカウントの友だち追加をしてくれたユーザーには、来店翌日にLINEミニアプリのデータと連携して自動でアンケートを配信し、取得した回答を店舗の運営に役立てています(※)。
※ ユーザーの許諾を取得したうえで、友だち追加されます。また、ユーザーのLINEアカウントと紐づいた行動データの取得・活用には、ユーザーの同意が必要となります。
「アンケートでは再来店意欲、接客サービス、料理の味、提供速度、清潔感の5項目を100点満点で評価してもらい、それぞれの良かったところ・悪かったところをコメントでいただけるようにしています。アンケート結果を基に1週間に一度、店長ミーティングを行い、店舗運営を改善しています」
例えば、ある店舗では「店員さんが忙しそうで、呼び止めにくい」といった声があったため、呼び出しベルを設置しました。ほかにもアンケートの回答にあった指摘からご飯の炊き方を工夫するなど、地道な改善を続けているそうです。
そうした改善が実り、海老牡蠣酒場だるまでは、2025年1月の再来店意欲は77点でしたが、3月には90点に。料理の味も77点から91点と、そのほかの項目も含めて顧客満足度が高まっていることが分かりました。
「LINEミニアプリとLINE公式アカウントのおかげでアンケートが回収しやすい上に、顧客満足度のマイナス面が可視化されるので、それを改善していく作業が効率的にできるようになりました。それまでは顧客満足度を高めるために私がスタッフに『こうしよう!』と呼びかけても、内容によってはあまり反応が良くないこともありました。けれども、根拠となるデータがあるとみんな納得して動いてくれるんですよね」
分析したユーザーの食事データを活用し、再来店率・顧客単価を向上
当初からの課題だったリピーターの集客には、LINEミニアプリのデータを用いたメッセージ配信をフル活用しています。
LINEミニアプリでは、ユーザーの許諾を得た上でモバイルオーダーの利用に伴う「来店日時」「注文内容」「注文金額」といったユーザーの情報も取得しています。Dazyは取得したデータを徹底的に分析してセグメントをつくり、ユーザーに応じて最適なメッセージを配信しているといいます。現在、最も多い店舗では、約40種類のメッセージを用意しています。
「データを分析していると、海老牡蠣酒場だるまでは、初来店した方の再来店する確率が約10%で、その方々の平均来店間隔が40日であることが分かったんです。そのため、40日より少し早い30〜35日以内にもう一度来てくださった方限定で使えるクーポンを配信することにしました」
その結果、メッセージの総配信数のうち、7.1%のユーザーが再来店したといいます。来店スパンの短縮を図りながら、効果的に再来店を促すことができたそうです。
林氏は取り組みを重ねる中で、配信に用いるクーポンの内容にも工夫を凝らしました。
「ダイニー社に、お客さまの食事内容の喫食データと顧客単価の相関図を出していただいたんです。分析を繰り返すうちに、揚げ物を注文する方は、顧客単価が高いことが分かりました。揚げ物を食べるとのどが渇くので、ドリンクを多く注文する傾向があるようです。そこで、一度ご来店いただいたお客さまに『1週間以内のご来店で牡蠣フライ1個無料』クーポンを配布したんです。そうしたら、クーポンを見て再来店してくださった方の平均顧客単価が4,980円から5,800円に上昇しました。無料クーポンを使用しても、顧客単価は上がるんだと実感しましたね」
さらにDazyではクーポン配信だけではなく、揚げ物が注文されやすくするため、モバイルオーダーの画面で揚げ物メニューを上部に配置したり、商品角度を調整したりするなどLINEミニアプリ内のデザイン面の改良も重ねました。
そうした取り組みの結果、海老牡蠣酒場だるまでは2025年の1月と3月を比較して、リピーターの売り上げ割合が7.6%から12.9%へと上昇しています。
「海老牡蠣酒場だるまはランチの営業もしているのですが、ランチの時間帯に使えるトッピング無料のクーポンを配布することで、一度来店していただき、おいしさを知ってもらいたいと思っています。すると、2度目の来店では、クーポンがなくてもトッピングを追加してくれる方もいます。そうして、徐々に顧客単価も上がっていきました。メニューの変更などいろいろな要素もあったのですが、ランチタイムの再来店率は2025年1月には7.9%だったのが、4月には9.7%に上昇しました」
データを活用し、ユーザーの満足度を高めながら店舗の繁盛へつなげる
今後、林氏はメッセージ配信に用いるセグメントをより細分化し、ユーザーにもっと喜んでもらえるようなメッセージを届けたいと考えています。
「例えば、当社の居酒屋は18時半〜20時半くらいが最も忙しい時間帯です。けれども、お客さまの中には、17時台など少し早めにお越しになる方もいらっしゃいます。そのような早い時間帯にご来店くださったお客さま向けに『早い時間の来店限定でお得になるクーポン』を配信すれば、また来店してくださるきっかけになるかもしれない。お客さまに喜んでいただきながら、お店の回転率も高まり、結果的に売り上げも上がっていくのではと考えています」
さらに同社では、LINE公式アカウントやLINEミニアプリの活用の幅を広げていくため、同社の若いスタッフも交えて、ダイニー社やLINEヤフー社と定期的に勉強会を行っています。
「飲食店は『おいしそうだな』『入ってみたいな』と思ってご来店くださったお客さまを、期待通り、もしくはそれ以上の気持ちにしてお帰しすることで繁盛していくものです。そうしたポジティブなイメージをもってリピーターになっていただくためには、アンケートやモバイルオーダーなどのデータ活用は欠かせません。リピーターの集客には、LINE公式アカウントやLINEミニアプリを使うのが一番だと思っています。今後もさまざまなアイデアを試して、お店をもっと盛り上げていきたいですね」
| 企業名 | 株式会社Dazy |
|---|---|
| 所在地 | 東京都千代田区
|
| 事業内容 | 飲食店事業、映像制作事業
|
| サービス | だるま酒場、海老牡蠣酒場だるま、出汁林、月の鐘 |
(公開:2025年7月、取材・文/土橋水菜子、株式会社POWER NEWS、写真/慎芝賢)
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