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LINEミニアプリ LINE公式アカウント

見えない顧客をファンに!オフィスグリコがLINEミニアプリで挑む顧客理解とLTV向上

江崎グリコ株式会社 / グリコチャネルクリエイト株式会社

2025.09.10

左から
江崎グリコ株式会社 ダイレクト部 辻中 隆一氏
グリコチャネルクリエイト株式会社 事業企画室 角村 明日加氏
江崎グリコ株式会社 デジタル推進部 木方 泰輔氏

大手総合食品メーカー・江崎グリコ株式会社(以下、江崎グリコ)が展開する、置き菓子サービス「オフィスグリコ」は無人販売スタイルであるため、長年“見えない顧客”との関係構築に課題を持っていました。その状況を変えようと、LINEミニアプリLINE公式アカウントを活用した結果、顧客理解の深化とユーザーとの接点拡大を実現しています。これまでの取り組みについて、同社デジタル推進部の木方泰輔氏(以下、木方氏)とダイレクト部の辻中隆一氏(以下、辻中氏)、グリコチャネルクリエイト株式会社事業企画室の角村明日加氏(以下、角村氏)に話を聞きました。

目的
  • 無人販売というスタイルの制約を超え、ユーザーの購入傾向を可視化したい
  • ユーザーとリアルタイムかつ継続的にコミュニケーションを図りたい
  • ユーザー一人ひとりに寄り添い、サービス満足度やLTV(顧客生涯価値)を向上させたい
施策
  • オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)を委託開発し、ユーザーの利便性に寄り添うスマホならではの購買体験を創出
  • 購買傾向に応じたクーポン配信やアンケート機能を活用
  • 会員ランク制度を導入し、ウェルビーイングに役立つコンテンツをLINE公式アカウントから配信
効果
  • LINE公式アカウントの友だちが数カ月で10万人に達し、ブロック率は約7%に留まる  
  • 購入データとアンケート結果を基に、顧客理解の深化と商品開発に活用
     

無人販売のユーザーを可視化して顧客理解を深めたい

江崎グリコが展開する企業向けの置き菓子サービス「オフィスグリコ」。

オフィスに設置された無人売り場から、好きなお菓子や飲み物、軽食を購入できるこのサービスは、小腹を満たしたり、喉を潤すためだけでなく、働く人のモチベーションや心の健やかさ、ウェルビーイングを支えるサービスとして注目を集めています。

 

オフィスグリコの設置例
オフィスグリコは、オフィスに設置された専用ボックスから、従業員が手軽にお菓子や飲料などを購入できるサービス

カエルをトレードマークに置き菓子の元祖として20年以上にわたり親しまれてきたオフィスグリコは、ビジネスが順調に成長する一方で課題を抱えてきたと、角村氏は振り返ります。

 

「無人販売という仕組み上、以前はどのようなお客さまがいつ、何を購入されたのかといった情報が全く分かりませんでした。把握できるのは、どの商品が何個売れたかという販売実績のみ。2018年にQRコード決済を導入するまでは現金決済だけだったこともあり、利用状況や顧客のニーズの把握が非常に困難でした」(角村氏)
 

グリコチャネルクリエイト株式会社 事業企画室 角村 明日加氏

こうした顧客理解に関する課題に加え、ユーザーとの接点に関する悩みもあったといいます。

 

「サービスをより長くご利用いただくためには、お客さまの利用状況やニーズを理解したうえで、適切なタイミングでコミュニケーションを図る必要があります。しかし、オフィスグリコは企業さまのスペースをお借りして無人で販売しているため、自由にPOPを設置したり、販促施策を展開したりといったアクションも取りづらく、リアルタイムで接点づくりが難しいという課題を感じていました」(辻中氏)

 

江崎グリコ株式会社 ダイレクト部 辻中 隆一氏

そうした中で活用を始めたのが、同社の別サービス「SUNAOデリバリー」ですでに活用されていたLINEミニアプリでした。顧客の行動を可視化し、コミュニケーションを活性化することで、サービスへの満足度が高まり、LTV向上につながるのではないかという期待が寄せられました。

 

木方氏はこう話します。
「オフィスグリコは、導入された職場の中だけで展開されるクローズドなサービスです。SNSのような不特定多数に向けた発信では、実際のユーザーに届いているかが分かりづらく、接点として有効性が低いと感じていました。また弊社の公式サイトは主に法人向けの情報発信が中心で、エンドユーザーとのコミュニケーションの場にはなっていませんでした」

 

さらに、ネイティブアプリではなく、LINEミニアプリを選択した理由について木方氏はこう続けます。
 

江崎グリコ株式会社 デジタル推進部 木方 泰輔氏

「お客さまとリアルタイムかつ継続的にコミュニケーションを取れ、直接つながれる点で、LINEミニアプリはオフィスグリコの利用者と相性が良いと感じました。加えて、ネイティブアプリのように新たにダウンロードする必要がなく、多くの方が日常的に利用しているLINE上で、すぐに弊社のサービスを利用できます。オフィスグリコの利用者は忙しいオフィスワーカーが中心のため、この導入ハードルの低さは魅力でした」(木方氏)

 

“楽しく・お得に”購入できる!オフィスグリコのLINEミニアプリ

こうしてオフィスグリコのLINEミニアプリ「オフィスグリコアプリ」の開発は2023年8月にスタートし、2024年6月にローンチしました。

商品のバーコードをオフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)で読み取ることで、ユーザーの利便性に寄り添うスマホならではの購買体験を創出できる点に加えて、クーポン配信や会員ランク制度といった機能を搭載しました。

 

「弊社はLINEミニアプリのパッケージを使うのではなく、一から設計する委託開発で構築しましたが、それでもとても手軽だと感じました。ネイティブアプリでは、スマホのOS(iOSやAndroidなど)ごとに対応したバージョンを用意する必要があり、インフラの構築や保守に時間とコストがかかります。その点、LINEミニアプリはそれらの負担が少なく、柔軟かつスピーディに開発・運用できるのが大きなメリットです」(木方氏)

 

開発にあたっては、買い物体験のスムーズさを重視し、UI(ユーザーインターフェイス)や導線設計にもこだわりました。ユーザーの負担が増えないよう、迷わず、離脱せずに購入を完了できるよう丁寧に検討が重ねられました。

 

「オフィスグリコ本来の魅力である“手軽さ”をオンラインでも再現できるよう工夫しました。例えば、商品読み取りページではバーコードを強調するビジュアルを採用するなど、迷わず操作できるUI設計を行いました。加えて、できる限り買い物の工程を減らすため、連続購入がスムーズに行えるような導線も取り入れています」(木方氏)
 

初回は売り場に設置されたLINEミニアプリの入口となるPOPから、オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)を登録する
以降は、購入したい商品のバーコードを読み取るだけで、金額の入力をしなくても簡単に購入できる
  • ご利用には、提携しているスマホ決済アプリ(PayPay、d払い、au PAY)への事前登録が必要です

さらに、ユーザーとのコミュニケーションを拡大するための施策にも力を入れています。

 

「お客さまとコミュニケーションを図るため、LINEミニアプリ経由でクーポンを配信しています。おすすめ商品を手軽に試していただけるよう、購入傾向に応じて配信タイミングを工夫するなど、届けたい情報を確実に届けられる仕組みを整えました。また、これまで把握しづらかったお客さまの生の声を直接収集できるよう、アンケート配信も導入しました」(辻中氏)
 

それだけではなく、買い物体験に“遊び心”を取り入れる仕掛けも加えられています。

 

「私たちが扱う商品は、お菓子など “職場のリラックス要素”でもあることから、オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)にも少しでも楽しさを感じてもらえる仕掛けを盛り込みたいと考えました。そうした思いから、利用回数に応じてランクが上がる機能を設けています」(辻中氏)
 

オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)の機能例
ユーザーはオフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)を活用することでお得なクーポンや会員ランクを確認することができる

友だち数は約10万、ブロック率は7%

売り場には、オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)のQRコードを記載したPOPを掲示し、ユーザーの利用を促しています。スマホでQRコードを読み込むとLINEミニアプリが起動し、そのままスムーズにLINE公式アカウントの「友だち追加」まで誘導できる仕組みです。自然な流れでLINEミニアプリの利用と同時に友だちになってもらえるため、オフィスグリコのLINE公式アカウントは着実に友だち数を伸ばしてきました。リリースから数カ月で友だち数は約10万に達し、ブロック率もわずか7%にとどまっています(2025年8月時点)。

「お客さまとOne to Oneでコミュニケーションが取れる点は、LINE公式アカウントならではの強みだと感じています。私たちは新商品の案内やウェルビーイングに役立つコンテンツ発信などを行っていますが、ネイティブアプリ上でそうした企業からのメッセージを受け取るのは、ユーザーにとってあまり馴染みがありませんよね。しかしLINE公式アカウントであれば、多くの方が日常的に使っているプラットフォーム上で自然にやり取りができ、そこも大きなメリットだと思います。なによりも、お客さまから『使いやすい』『うちのオフィスにも入れてほしい』といった声が届いていることをうれしく感じています」(木方氏)

 

LINE公式アカウントからのメッセージ配信例
オフィスグリコのLINE公式アカウントでは、友だちに向けて
定期的にウェルビーイングに役立つコンテンツを発信している

こうしたユーザーとの接点拡大は、成果にもつながっています。

 

「リリース当初は、会員数やLINE公式アカウントの友だち数、ブロック数を主なKPIに設定していました。ただ、想定以上の反響があり、リリースから数カ月と早い段階で目標を上回ったため、現在はLINEミニアプリのアクティブユーザー率など実際の利用状況をより重視し、長くサービスをご利用いただけるよう改善に生かしています。また、オフィスグリコの営業に行く際に、LINEミニアプリを導入していることは競合他社との差異化となり、訴求ポイントの一つになっています」(角村氏)

 

さらに、顧客理解に関する課題も解消されたといいます。

 

「オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)の導入により、どのようなお客さまがいつ、何を購入したのか、つまりユーザーの性別や年代などの属性情報に加え、購入時間帯などのユーザーごとの購入データを把握できるようになりました。どの商品と一緒に購入されたのかという併売傾向も把握できます。さらに、アンケート機能を通じて『どのような目的でこの商品を購入したか』といった質問をすることで、利用シーンや購入意図などの定性データも収集できています。こうした定量・定性の両面からのデータ取得により、お客さまの購入傾向を可視化し、より深い顧客理解が可能になっています」(辻中氏)

 

そうして得られたユーザーの声や反応を商品ラインアップの拡充やサービスに反映し、その成果を顧客に還元する――そんな“フィードバックの循環”を推進しています。

 

「オフィスグリコの商品ごとに購入データを細かく把握し、社内に共有できるようになりました。それらのデータはマーケティングや商品開発に活用されており、リアルなデータを根拠にした判断ができるようになったことは非常に大きな価値だと感じています」(木方氏)

 

例えば、新商品をテスト販売する際には、まずオフィスグリコで試験的に展開し、購入データを収集。その結果を、スーパーなどの小売店での販促計画の検討や、新フレーバー開発の判断材料として活用しています。
 

オフィスグリコアプリ(LINEミニアプリ)で得たデータを商品ラインアップの拡充や開発に生かすことが可能に

今後の展望は、このフィードバックの循環をさらに高度化し、実効性を高めることです。

 

「現在は取得したデータをより深く分析し、効果的に活用する方法を探っています。具体的には、収集すべき情報と目標・KPIとの結び付けを再整理し、活用方針を見直している段階です。例えば、ある商品のデータを分析したところ、『男性に人気で、購入の多くは昼ではなく18〜19時に集中している』といった意外な傾向が見えてきました。こうした細かな気づきまで、今後の商品企画や施策に積極的に生かしていきたいと考えています」(角村氏)
 

オフィスグリコの施策の全体イメージ

(公開:2025年9月、取材・文/杉原由花、POWER NEWS編集部)

  • LINEミニアプリは順次導入を進めており、すべてのオフィスグリコでご利用いただけるわけではありません

  • 本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです

  • 本記事内の実績は取材先調べによる数値です

企業名 江崎グリコ株式会社
所在地
大阪府大阪市
事業内容
菓子、冷菓、食品、乳製品、健康食品、食品原料などの製造・販売
サービス オフィスグリコ