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JR東日本「個」客体験を支えるデータ活用|LINEが生む行動変容

東日本旅客鉄道株式会社

2026.01.09

東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 デジタルビジネスユニット
左:星野知久氏 右:仲條浩文氏

東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、近年、ポイントサービス「JRE POINT」と交通系ICカード「Suica(スイカ)」を軸としたOne to Oneマーケティングに注力しています。ユーザーを深く知り、有益な情報を届けることで行動変容を促す――。その実現に大いに役立っているのが、LINE公式アカウントLINEミニアプリを活用したユーザー接点の拡大とデータ活用です。本施策について、デジタルコミュニケーションを担当する仲條浩文氏と星野知久氏に話を伺いました。

目的
  • JRE POINTを基盤にユーザー理解と情報提供精度を高めたい
  • ユーザー理解を深め、移動・購買・サービス利用の行動変容につなげたい
  • JRE POINT自社アプリ未利用層にもリーチし、会員化・サービス利用率を高めたい
施策
  • JRE POINTのLINEミニアプリを導入し、さまざまなお客さまが使いやすい新たな接点を拡大
  • LINE公式アカウント「JR東日本 Chat Bot」で運行情報・サービス案内を提供
  • JRE POINT ID と LINE ID を連携し、精度の高いセグメント配信を実施
  • LINEヤフーのオーディエンスデータを活用し、興味関心に応じた配信を最適化
     
効果
  • LINEミニアプリの連携者数が4年で約4.4倍に増加
  • LINEヤフーのオーディエンスデータを活用した配信実績に対して、クリックユーザーへの再配信で開封率71.3%・クリック率24.3%
  • 大井町駅の混雑緩和施策では48%が行動変容し、2週間後も84%が継続利用
     

ユーザー接点を拡大し、最適なコミュニケーションを目指す

JR東日本は、鉄道輸送をはじめとする「モビリティ事業」と、駅ビルやホテル運営、Suicaなどの「生活ソリューション事業」の2軸で事業を展開しています。同社がビジネス成長戦略として掲げるのは、「DX(デジタル技術による変革)によるユーザー接点の強化と生活全体に寄り添うサービスへの進化」です。

 

その柱の一つは、Suica を「移動のツール」から「生活のツール」へと発展させ、JR東日本グループが提供する各サービスをつなぐ基盤として位置付けることにあります。こうした構想を実現するには、日常のあらゆる場面で生まれるユーザー接点を生かし、One to Oneマーケティングを可能にするための、ユーザー理解と最適な情報を届ける仕組みづくりが欠かせません。
 

JR東日本 ビジネス成長戦略
Suicaを中心にマスからOne to Oneマーケティングへ

こうした背景のなか、同社が日常的なデジタル接点として重視してきたのが、LINE公式アカウント「JR東日本 Chat Bot」です。

 

「私たちが所属するマーケティング本部は、多様なデジタルコミュニケーションツールを活用しながら、各部署で持ち上がるニーズや課題への対応を行っています。その中で私たちが担当しているのがJR東日本のLINE公式アカウント『JR東日本 Chat Bot』です。お客さまが日々利用する路線を『My路線』として登録いただき、その路線の運行情報をリアルタイムに配信。運行情報配信によって生まれたお客さまとの接点を生かして、当社サービスのプロモーションや、鉄道を利用するお客さまの満足度向上につながるような施策を実施しています」(仲條氏)
 

東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 デジタルビジネスユニット 仲條浩文氏
LINE公式アカウント「JR東日本 Chat Bot」
運行情報通知や各種案内サービスを提供する、LINE公式アカウント「JR東日本 Chat Bot」

「JR東日本 Chat Bot」によって日常的なユーザーとの接点は生まれていたものの、当社データの活用による更なる効果創出のため、2022年3月に「JRE POINTのLINEミニアプリ」を導入しました。

 

JRE POINTとは、鉄道の利用や駅ビルでの買い物など、さまざまな場面でポイントが貯まる、JR東日本のポイントサービスです。

 

「もともとJRE POINTは自社アプリで展開していましたが、LINEミニアプリでは新たなユーザーの集客を期待していました。また、データを活用したLINE公式アカウントの配信効果を最大化するうえでも、LINEさえあればダウンロード不要で利用できる点は魅力でした」(星野氏)

 

JRE POINT IDは、Suicaの利用履歴や改札通過情報、駅ビルやエキナカでの購買データなど、日常の行動を横断的に結びつけられる点に価値があります。こうしたデータ基盤を生かすうえでも、LINEミニアプリでの活用はユーザーとの接点を広げ、行動理解を深める役割を担っています。

東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 デジタルビジネスユニット 星野知久氏
JRE POINTのLINEミニアプリ化の狙い

ID連携がもたらす、より深いユーザー理解とコミュニケーション

One to Oneマーケティングの実現に向けて重要な役割を果たしているのが、JRE POINT ID とユーザーのLINE IDを連携(※)する仕組みです。

  • ユーザーの同意・許諾が必要です

「ID連携によって、LINE公式アカウントでJRE POINTデータを活用したセグメント配信が可能になり、配信結果をふまえた統合分析も実現しました。その結果、お客さまにより有益な情報を届けられるようになり、顧客理解も一段と深まりました。現在は、One to Oneマーケティングをさらに深化させ “個”客体験の向上と配信効果の最大化を目指しています」(星野氏)

「個」客体験を実現するための仕組み

ID連携者数は4年で4.4倍に! ユーザーのチャネルの使い分けも発見

実際、LINEミニアプリ経由のID連携者数は、2022年から約4.4倍に増加しました。星野氏は「パーソナライズ配信を展開するうえでの基盤が整い、LINEミニアプリの導入は大きな一歩となりました」と振り返ります。

JRE POINTのLINEミニアプリ導入後の成果
LINEミニアプリ経由の会員数は2022年から約4.4倍へ
  • 2022年~2025年9月JR東日本調べ

また、LINEミニアプリ導入によって、ユーザー利用行動に関する新たな発見もありました。

 

「JR東日本の顧客をヘビーユーザー、ライトユーザー、非会員の3構造と見た場合、自社アプリはヘビーユーザー向けのサービスと位置づけていました。一方でLINEミニアプリはライトユーザーの利用を想定していましたが、実際にはヘビーユーザーにも広く利用されていました。”ユーザーはその時々で使いやすいチャネルを選んでいる”という事実が明らかになったのです。

 

実際、“主に自社アプリを使っているけど、LINEミニアプリも便利だから併用したい”という声がヘビーユーザーからも多く寄せられています。当初の想定とは異なりますが、“ユーザーが状況に応じて選べる”という環境を提供できているのは、大きな価値を感じています。サービス全体の利便性向上により、自社アプリとLINEミニアプリ双方の利用率アップにも貢献しているはずです」(星野氏)

JRE POINTのLINEミニアプリの位置づけ
ユーザーは自分に合ったチャネルを選んで利用しており
LINEミニアプリはライトユーザーからヘビーユーザーまで幅広くカバーしている

データ活用が導いた成果:移動促進・混雑緩和

では、JR東日本は、データ連携を軸にLINE公式アカウントとLINEミニアプリを活用して、どのような成果を上げたのでしょうか?2つの施策を紹介します。

 

一つ目は移動を促進する取り組みです。

 

「旅行商品の販促において、効果的なセグメント配信を行いました。従来、私たちが持っているJRE POINTのデータだけでは、“旅行に興味があるかどうか”という意向は把握できませんでした。しかし、LINEヤフーのオーディエンスデータの中の“趣味嗜好(旅行)”や“旅行意向(北陸信越・関東・東北)”を掛け合わせたことで、“旅行を検討している見込み層”に対してLINE公式アカウントでのメッセージ配信を実施しました」(仲條氏)

旅行商品をセグメント配信で訴求

 

その結果、「旅行好き」のセグメントでは開封率が31.2%でクリック率は19.8%、「旅行意向」のセグメントには、開封率54.2%、クリック率7.5%という結果が得られました。

 

LINEヤフーのオーディエンスデータを活用したセグメント配信
  • 1:2025年8月初旬JR東日本調べ ※2:2025年8月下旬調べ

  • オーディエンスデータはLINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、 LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類した「みなし属性」および、実購買の発生した購買場所を「購買経験」として個人を特定しない形で参考としているものです(「みなし属性」にはOSは含まない)。「みなし属性」とは、LINEファミリーサービスにおいて、LINEユーザーが登録した性別、年代、エリア情報とそれらのユーザーの行動履歴、 LINE内コンテンツの閲覧傾向やLINE内の広告接触情報をもとに分類したものです。(分類の元となる情報に電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容等の機微情報は含まれません)なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っておりません。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主等)の提供は実施しておりません。

さらに、これらのセグメントにおいて、クリック実績のある約1万人を対象に再配信したところ、開封率は71.3%、クリック率は24.3%と非常に高い成果につながったのです。

 

「実際にアクションを起こした人に再アプローチすることで、“本当に興味がある人”“購入の可能性が高い人”にしっかり情報を届けられた」と仲條氏は振り返ります
 

LINEヤフーのオーディエンスデータを活用したセグメント配信
  • 2025年6~8月JR東日本調べ

 

二つ目は、駅のサービス向上を目的とした混雑緩和の施策です。

 

JR大井町駅(東京都)では、ピーク時に東口・西口改札が大混雑する一方、中央口改札は比較的空いているという状況が続いていました。駅員による声かけやポスター掲出などで中央口への誘導を試みたものの、成果は限定的だったといいます。

 

「そこで、ⒶLINE公式アカウント『JR東日本 Chat Bot』の友だちで『My路線』を登録していること、ⒷLINEミニアプリユーザーの中で、JRE POINTにSuicaを登録していて大井町駅の改札利用実績があること——この二つの条件を満たすユーザーに限定して、中央口の利用を促すメッセージを配信しました。その結果、配信直後に48%のユーザーが中央口のみを利用するようになりました。さらに2週間後の調査でも効果は継続し、84%のユーザーが引き続き中央口のみを利用していました。ポスターや声かけでは成果がなかなか上がらなかった中、LINE公式アカウントのメッセージ配信を通じて行動変容が起きたという、新たな知見を得ることができました」(仲條氏)

 

自社データを活用したメッセージ配信
JR大井町駅の改札混雑を解消を目的に、東口・西口改札利用者に対して中央口改札の案内
ピーク時の混雑平準化の効果を狙いメッセージを配信した
LINEヤフーとJRのデータで実証実験
配信2週間後も効果が継続していることが判明
  • 2023年6月~2024年9月JR東日本調べ

 

JRE POINTとLINEヤフーのデータ連携により、多くの成果を上げているJR東日本。最後に、お二人に今後の目標について伺いました。

 

「グループ各社にも、今回のデータ連携の取り組みを広げていきたいと考えています。LINE公式アカウントのIDを共通化し、JRE POINT IDで各サービスとつながることで、よりスムーズで効率的なパーソナライズ配信を実現したいですね」(仲條氏)

 

一方、星野氏は広告ビジネスの強化への意気込みを語ります。

 

「駅構内のサイネージ広告などは、どうしても効果が見えづらいという課題がありますが、広告を見た人の行動をデータで可視化・検証できる仕組みを整えていきたい。その結果を基に、その場でLINE公式アカウントからクーポンを届けるなど、パーソナライズした広告展開をしたいですね。リアルとデジタルを統合した、より便利なサービスを提供していきたいと考えております」(星野氏)

 

(公開:2026年1月、取材・文/相澤良晃、写真/川嶌順)

  • 本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです

  • 本記事内の実績は取材先調べによる数値です

企業名 東日本旅客鉄道株式会社
所在地
東京都渋谷区
事業内容
旅客鉄道事業、貨物鉄道事業、旅客自動車運送事業、索道業、旅行業など