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LINEミニアプリ LINE公式アカウント

約8億6,000万円の消費拡大へ|刈谷市のLINEミニアプリ「K-pon」が生んだ成果とは

刈谷市役所

2026.02.16

愛知県刈谷市役所 商工業振興課 野村真平氏(左)竹澤聖剛氏(右)

人口約15万人(2026年1月時点)の愛知県刈谷市は、行政サービスのデジタル化を進める中で、LINE公式アカウントを市民と行政をつなぐ重要な窓口として位置付けています。同市は、2024年1月に市民にLINEミニアプリを活用したデジタルクーポン「K-pon」(ケーポン)の配布を開始し、2026年で3年目を迎えています。市民の消費を促し、物価高の影響を受ける商業者の支援を目的に展開された本施策について、デジタルクーポン事業を担当する愛知県刈谷市役所 商工業振興課の野村真平氏と竹澤聖剛氏に話を伺いました。

目的
  • 物価高の影響を受ける市内商業者を支援したい
  • 市民の消費を喚起し、地域経済を活性化したい
  • LINE公式アカウントの友だち数の増加、施策のデジタル化を推進したい
施策
  • LINEミニアプリを活用したデジタルクーポンK-ponを配布
  • 業種別・段階的な配布や利用上限の設定など、データを基に施策を改善
  • LINE公式アカウントからのメッセージ配信でクーポン利用を促進
     
効果
  • 2025年は約6万8,000人がクーポンを利用し、幅広い年代に利用された
  • 2025年の参加店舗は336店舗にのぼり、約8億6,000万円を超える消費拡大につながった
  • LINE公式アカウントの友だち数が増加し、人口を上回る16万人に到達した

K-pon施策を契機に、短期間で友だち約5万人増(2024年)

愛知県のほぼ中央に位置する刈谷市は、自動車関連産業を筆頭に“ものづくりのまち”として知られています。人口は約15万人。産業と居住が近接する都市構造を持ち、働く世代やファミリー層が多く暮らすのも特徴です。

 

刈谷市は、2022年3月に「刈谷市DX推進計画」を公表。デジタル化による行政サービスの利便性向上をめざして、行政手続のオンライン化、キャッシュレス決済の導入、LINE公式アカウントやSNSによる情報発信などを進めてきました。
 

刈谷市 LINE公式アカウント
刈谷市 LINE公式アカウント
刈谷市LINE公式アカウント。暮らしの案内やイベント情報、市民だよりなどをLINE上で確認できる

地域の商工業振興及び中小企業の持続的な事業経営支援等を担う商工業振興課では、物価高騰の影響を受ける市内商業者の支援と、市民の消費喚起を目的に、2024年からLINEミニアプリを活用したデジタルクーポンの「K-pon」を配布。LINE公式アカウントの友だちを対象に実施しました。

 

デジタルクーポン事業を担当する竹澤氏は、「LINEミニアプリを活用することで、クーポン利用の流れの中で自然にLINE公式アカウントの友だち追加につなげられる点が導入の決め手の1つになった」と明かします。加えて、ユーザーにとって利用のハードルが低い点も重要だったといいます。すでに、LINEを活用しているユーザーであれば、アプリを追加でダウンロードする必要がなく、すぐにクーポンを受け取れる仕組みであることも評価されました。

 

「市ではDXを推進している中で、LINE公式アカウントを重要な情報発信ツールと位置付けています。ただ、単に『友だち追加してください』と呼びかけるだけでは、なかなか行動にはつながりません。その点、LINEミニアプリを使ったデジタルクーポンであれば、クーポン取得や利用という市民にとってのメリットが先にあり、その流れの中で友だち追加してもらえる。無理のない、自然な形で接点を増やせると考えました。機能面について言えば、管理画面でクーポンの利用状況をリアルタイムで把握でき、予算管理に生かせる点も魅力に感じました」(竹澤氏)

 

実際、当初は2024年1月15日~2月25日の約6週間を実施期間と定め、市内の登録店舗で利用できる2,000円分(500円×4枚)のクーポンを週ごとに取得する予定でした。しかし、開始直後から想定を上回る利用があり、管理画面で予算消化のペースをリアルタイムに確認しながら運用を進めた結果、予算を超過する前に早期終了を判断しました。
そのため、予定より3週間早い2月4日での終了となりましたが、利用状況をデータで把握しながら判断・対応を進められた点は、デジタルクーポンならではの特長でした。
 

LINEミニアプリを活用したデジタルクーポン「K-pon」の利用フロー
市が案内するQRコードを起点に、LINE公式アカウントの友だち追加からクーポン取得、店舗での利用までをLINE上で完結できる

「2024年は予定より少ない実施期間となりましたが、開始前に約7万人だった友だち数は、終了時には5万人増の12万人になりました。そこには市外在住の方も含まれてはいますが、より多くの刈谷市民にLINE公式アカウントの友だちになっていただくという目標は達成できたと思います。紙の商品券を配布するとなると、どうしても印刷費、郵送費などの一定の費用がかかりますし、担当職員の作業量も膨大になります。コスト削減、作業負担の軽減という点でも、やはりLINEミニアプリを活用する方法を選択してよかったと感じています」(竹澤氏)

 

K-pon配布でLINE公式アカウントの友だち数が約5万人増加(2024年)
K-pon配布前は約7万人だったLINE公式アカウントの友だち数は、2024年2月の事業終了時には約12万人へと増加した

2025年は約6万8,000人がクーポンを利用。うち約3,500人が70代以上

2024年に大きな成果を上げた刈谷市は、2025年も1月から3月にかけてデジタルクーポン事業を実施しました。「前年の反省を踏まえていくつか改善したポイントがある」と野村氏は振り返ります。

 

「まず、利用者が殺到してクーポンを受け取れなかった方もいたことから、クーポン1枚当たりの金額を抑えて予算の範囲内でより多くのクーポンが配れるようにし、1回の配布を『300円×10枚』としました。また、第一弾(1月15~31日)を『飲食店専用K-pon』、第二弾(2月12~28日)を『小売・サービス専用K-pon』、第三弾(3月1~14日)を『全事業者対象K-pon』として、業種別クーポンを三段階に分けて配布。さらに1店舗で利用できる枚数の上限設定を変更することで、利用しやすく、より多くの店に足を運んでもらえるよう工夫しました」(野村氏)
 

刈谷市のLINE公式アカウントでは都度クーポン利用を促すメッセージ配信も行ったところ、徐々に利用者が増加。クーポンの利用状況を確認しながらメッセージ配信で利用を促進し、最終的に2025年は全期間中で計約6万8,000人ものユーザーがK-ponを利用しました。

 

「利用者の65%は刈谷市内在住の方でした。年代別では40代の利用が最も多く、次いで30代、50代と続きます。実は70代以上の方でデジタルクーポンを利用できない方を対象に紙の商品券も一定数用意し、申請すれば配布する準備をしていたのですが、その申請は少数に留まりました。70代以上でも約3,500人の利用があり、改めて“LINEは幅広い年代で利用が可能なツール”だと認識しました」(野村氏)
 

K-pon利用者の居住地・年代別内訳(2025年)
利用者の65%は刈谷市内在住で、年代別では40代の利用が最多。30代、50代と続き、70代以上でも約3,500人の利用が確認された

また、利用ユーザーを対象にしたアンケートでは「LINEミニアプリが使いやすくて良かった」「K-ponのおかげで新しいお店を開拓できた」といった好意的な意見が大半だったとのこと。

 

2025年の参加店舗数は336店舗で、4割が飲食店、6割が小売・サービス業であり、約8億6,000万円を超える消費拡大につなげることができました。参加店舗からは「新規のお客さまが来てくれた」「売り上げアップにつながった」といった声が上がっています。

 

参加店舗336店舗に広がったK-pon施策の成果(2025年)
2025年の参加店舗は336店舗にのぼり、飲食店と小売・サービス業の双方で活用された

データを活用しながら施策の効果を高めていきたい

刈谷市のLINE公式アカウントの友だち数は、2025年のデジタルクーポン事業実施期間中に約3万人増加し、2025年4月には人口を上回る16万人に達しています。

 

人口を上回る16万人へ。K-pon施策で友だち数が増加

両氏にあらためてデジタルクーポン事業に対する感想と、今後の展望について聞きました。

 

「デジタルクーポンを導入することにより、印刷・郵送等にかかるコストを中心に削減できただけでなく、利用状況のさまざまなデータが取得できるようになりました。データを分析することで、より多くの店舗を回ってもらえるような仕組みに変えたり、より利用率を高める工夫ができたりと、前年より施策の効果を高められたことが良かったと思います」(野村氏)

 

竹澤氏も続けます。


「K-ponが店舗側の決済手数料がかからない仕様で、LINEミニアプリの操作性も簡便なため、店舗、市民の双方にとってストレスのないサービスを提供できたのではないかと思います。2026年は紙の商品券を完全に廃止し、デジタルクーポンに一本化した形での実施を進めています。ひきつづき、市内商業者の力になれるよう取り組んでいきます」(竹澤氏)

 

(公開:2026年2月、取材・文/相澤良晃)

  • 本記事内の数値や画像、役職などの情報は全て取材時点のものです

  • 本記事内の実績は取材先調べによる数値です

名称刈谷市役所
住所〒448-8501 愛知県刈谷市東陽町1丁目1番地