株式会社チュチュアンナ(以下、チュチュアンナ)は、靴下・下着・ルームウェアなどを取り扱う製造小売企業です。国内外の商業施設に約425店舗を展開するほか、ECサイトも運営しています(2025年7月時点)。同社では売上拡大を目指す中で、会員施策の中心であるネイティブアプリ(自社アプリ)に加え、2024年11月には新たにLINEミニアプリの会員証を導入しました。その結果、LINEミニアプリを通じて新規層を取り込むことに成功し、会員数の拡大につながっています。その取り組みについて、同社デジタルマーケティング部、マネージャーの坂本小津江氏(以下、坂本氏)に話を聞きました。
- 全社の売上拡大に向けて、店舗・EC双方で会員基盤を強化したい
- 非会員と比べて購買単価が高い会員を増やし、売上増とLTV向上を図りたい
- ネイティブアプリをダウンロードしないライト層と接点を持ち続けたい
- ネイティブアプリと同等の機能(会員証/ECサイト連携など)を持つLINEミニアプリを2024年11月に導入
- 店頭でネイティブアプリのダウンロードを断られた際に、LINEミニアプリでの仮会員登録を提案
- LINEミニアプリからECサイトへ誘導し、マイページで本会員登録を促す
- LINE公式アカウントの友だちにパーソナライズメッセージを配信し、購買意欲を喚起
- LINE公式アカウントのリッチメニューに会員証を表示し、仮会員には本登録(本会員)を促す
- LINE公式アカウントの友だち数が大幅に増え、継続的な顧客接点を確立
- LINEミニアプリ経由の仮会員のうち20%が本会員に移行
- LINEミニアプリ導入により、ネイティブアプリ経由の獲得件数を維持しつつ、全獲得数は導入前比で16.7%増加
- 新規会員売上は前年比20%増加
ネイティブアプリ未利用層との新たな接点づくりが課題に
チュチュアンナは「リーズナブルな価格帯」と「デザイン性」を両立したスピーディーな商品開発を強みとし、時代のニーズに合わせたアイテムで幅広い世代から支持を集めています。
同社では適正な在庫管理のため、かねてからデータ活用を推進するとともに、販売チャネルのデジタル化も進めてきました。2007年5月にECサイトを開設し、2017年にはデジタル会員証や商品閲覧機能を備えたネイティブアプリもリリース。さらに、EC購入時に商品単価が低く、送料無料条件を満たしにくいユーザーに向けて、「店舗受け取りサービス」を導入するなど、ECと店舗をつなぐ取り組みを強化し、右肩上がりの成長を続けています。
一方で、会員施策の中心であるネイティブアプリのダウンロードをためらうユーザーも一定数存在し、アプリ未利用者層とどう接点を持つかは課題の一つとなっていました。
LINEミニアプリでライトユーザーを集客、本会員化を促進
ネイティブアプリに代わる新たな手段はないか――。検討していた矢先に、開発会社から提案があったのがLINEミニアプリでした。
LINEミニアプリは、ユーザーが専用アプリをダウンロードしなくても、LINE上で自社の会員証提示やECサイトとの連携などができるサービスです。チュチュアンナでは、この利便性を生かしてLINEミニアプリを導入し、まずは簡易に登録できる仮会員制度を設けました。登録時点から購入時のポイントを貯められるようにし、LINEミニアプリでさらに詳しい情報を入れて本会員登録を行うことで、そのポイントを利用できる仕組みです。導入の狙いについて、坂本氏は次のように振り返ります。
「LINEミニアプリなら、スマホの容量や会員登録の手間を気にするお客さまにも、気軽にご利用いただけるのではないかと考えました。実際、ネイティブアプリの利用を断られたお客さまにLINEミニアプリをご案内すると、『LINEでできるなら』と登録していただき、これまで関係性が築きにくかったお客さまとも接点を持てるようになりました」
この効果を後押ししたのが、店舗スタッフの主体的な取り組みです。
「2024年11月の導入以降、各店舗が自発的にお客さまへの案内方法を工夫してくれています。店舗間の情報交換を活発に行ったり、ロールプレイング動画を撮影して、社内のオンライン掲示板に共有したりと、店舗スタッフ発の工夫が広がっています。スタッフが作成した動画が分かりやすく、全店の接客スキル向上につながっています」
「ぜひご登録ください」と積極的に案内する方が利用につながりやすいという
さらに、LINEミニアプリの初回登録と同時に、自然な流れでLINE公式アカウントの友だちになってもらえる点も導入メリットだったと坂本氏は語ります。
実は、チュチュアンナではLINEミニアプリの導入以前は、LINE公式アカウントの活用が限定的だったといいます。2016年6月に開設以来、長い間ECサイトの情報を配信するためのツールという位置づけでした。
LINEミニアプリ導入後は、LINE公式アカウントのリッチメニューからLINEミニアプリの会員証に遷移できるように設定。それをタップすればLINEミニアプリが起動するとともに、仮会員の友だちには本会員化を促せるようになりました。さらに、ユーザーがLINEミニアプリからECサイトに遷移すれば「マイページ」で「ネイティブアプリ連携」が提案されます。
一方で、すでに本会員の友だちがLINEミニアプリからログインすれば、本会員証が表示されるように出し分けています。
「その結果、LINE公式アカウントの友だちと会員情報が紐づき、よりパーソナライズされたメッセージを配信できるようになりました」と坂本氏は話します。現在は、閲覧履歴や購入履歴に合わせておすすめ商品を配信したり、店舗受け取りサービスの利用回数に応じてメッセージ内容を変えたりするなど、より細やかなコミュニケーションを実現しています。
また、仮会員の友だちには本登録を促すメッセージを配信し、会員化の後押しにもつなげています。
新規会員の16.7%がLINEミニアプリ経由、新規会員売上は前年比20%増
LINEミニアプリを導入した最大の効果について、坂本氏は「ライトユーザーの会員化が進み、会員売上を大きく伸ばすことができた」と評価します。
まず、LINEミニアプリをきっかけとして仮会員として登録したユーザーのうち、約20%が本登録へと進んでおり、会員化のハードルを下げる効果が確認できました。さらに、導入前と比較すると、導入後に登録した新規会員のうち、LINEミニアプリ経由が全体の約16.7%を占め、目標値の15%を上回る結果となりました。
「当初は、LINEミニアプリを案内するとネイティブアプリでの登録数が減るのではないかと心配していましたが、実際にはLINEミニアプリ経由の登録数がそのまま上乗せされる形になりました。LINEミニアプリ経由の新規会員が全体の約16.7%を占め、結果的に新規会員売上は前年から20%増加しました。これまでは、その分のお客さまとの接点を持つ機会を逃していたんだなと感じています」
また、LINE公式アカウントの活用による顧客接点の拡大も進んでいます。
「LINE公式アカウントの友だち数も、LINEミニアプリの登録時に自然と友だちになってもらえることで、LINEミニアプリ導入前とは比べものにならないほど増えました。ネイティブアプリでは通知をオフにされているお客さまも一定数いらっしゃるので、情報が届かず接点が途切れてしまうことがありました。LINEミニアプリはブロック率も低く、継続してお客さまとつながりを維持できています」
こうした効果を受け、同社は現時点ではネイティブアプリのダウンロードをマーケティングシナリオの最終地点としつつ、今後はLINEミニアプリももう一つの着地点として活用していくことを検討しています。
「ほとんどのお客さまがLINEを日常的に利用しているため、ネイティブアプリよりもLINEミニアプリを好まれる方もいらっしゃると思います。今後も、ネイティブアプリでアプローチしきれなかったお客さまに対して、LINEミニアプリで会員化を促し、売上基盤をより盤石なものにしていきたいですね」
(公開:2025年11月、取材・文/戸谷美帆)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です
| 企業名 | 株式会社チュチュアンナ |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府大阪市
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| 事業内容 | レッグウェア、インナー、ウェア、服飾雑貨等の商品企画、小売、卸売
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| サービス | チュチュアンナ |