リリース数2万超、月間1200万人が利用する「LINEミニアプリ」の衝撃
※当記事は、NewsPicksに掲載された記事の転載となります。
突然だが、あなたはアプリのダウンロードを面倒に思ったことはないだろうか。
いまや飲食店や小売店などで「アプリをダウンロードするだけで特典が付きます」という案内は珍しくない。しかし、特典目当てにダウンロードしたものの、その後は使わずじまい。
あなたのスマートフォンの片隅にも、いつの間にか忘れ去られたアプリが眠っているかもしれない。

実はこうした「使われないアプリ」の増加に企業側も頭を悩ませている。自社アプリは顧客接点の確保やデータ取得における重要な手段である一方、ユーザーにアプリをダウンロードしてもらい、さらに継続的に利用してもらうことは想像以上に高いハードルとなっているためだ。
そうした状況下で、新たな顧客接点の構築に悩む企業から支持を集めているのが「LINEミニアプリ」だ。
すでにユーザーのホーム画面に定着しているLINEの強みを活かしたこのプラットフォームは、月間アクティブユーザー数1200万人(国内)、LINEミニアプリにおけるリリースされたサービス数は2万件を超える急成長を遂げている(2024年12月末時点)。
なぜいま、多くの企業が「LINEミニアプリ」に活路を見出しているのか。LINEヤフー株式会社でLINEミニアプリの事業を統括する谷口友彦氏に、デジタル時代の新しい顧客接点のあり方を聞いた。

「まず、アプリ」という思考の落とし穴
店頭での買い物、SNSでの情報収集、メールマガジンの購読、オンラインショップの利用──。
私たちの日常に溢れるこれらの接点は、企業と顧客の関係を築く重要な機会、「顧客接点」と呼ばれている。
デジタル化が加速する今日、この顧客接点をいかに設計し、顧客との継続的な関係を構築するか。その答えを見出せるかどうかが、事業成長の大きな分岐点となっている。

これまでデジタル時代の顧客接点として、多くの企業が選択してきた手法の一つが「ネイティブアプリ※3」の開発だった。
「顧客接点について議論すると、まず『ネイティブアプリを作りたい』と希望する企業は多い。しかし、みなさんのスマホを見てください。すでにアプリで埋め尽くされた画面に、新しいアプリを追加することが、本当に効果的な戦略と言えるでしょうか」(谷口氏)
そう問いかけるのは、LINEミニアプリの事業を統括する谷口友彦氏だ。
※3 AppleやGoogleのストアからアプリをダウンロードし、端末へインストールするのが「ネイティブアプリ」。一方ダウンロードは不要で、Webブラウザ上で動くアプリを「Webアプリ」と呼ぶ。

企業のデジタル戦略において、自社アプリの開発は長らく定石とされてきた。だが、スマホが日常に定着して10年以上が経過したいま、その常識が大きく揺らぎ始めている。
谷口氏は、自社アプリが顧客接点として機能しづらくなっている主な背景を、以下の5つの視点から分析する。
- アプリがダウンロードされない 「バッテリーの消耗が不安」「ストレージ容量の圧迫が心配」「すぐに不要になりそう」などを理由に抵抗感を持つユーザーも少なくない
- ダウンロード後の格納問題 スマホ画面のさまざまなアプリに埋もれ、顧客接点としては機能しない状態に
- 継続利用率の急激な低下 一般的なアプリの継続利用率は、ダウンロード後1日で20%程度まで低下し、1カ月後には一桁台で推移すると言われる
- プッシュ通知の無効化 ユーザーの多くがSNSやメッセンジャーアプリ以外は通知をオフに設定し、コミュニケーション不能に
- パスワードなどの管理負担 特にシニア層において、パスワード忘れによりダウンロードやログインができないケースがある
特に1つ目のアプリダウンロードに関して、店舗でアプリのダウンロードを案内された際、約7割が断った経験があると回答している調査結果もあるという。

これらの課題は、アプリ開発に多額の投資をしても、効果的な顧客接点の構築を困難にしている。
では、この状況を打開するには、どのような選択肢があるのだろうか。
「LINEミニアプリ」という新しい選択
そうした状況下で、いま新たな顧客接点の選択肢として注目を集めるのが「LINEミニアプリ」だ。LINEアプリ内で完結するこのサービスの特徴は、その徹底的な「シンプル」さにある。
企業は自社アプリを必ずしも開発することなく、予約や注文などのサービスをLINEアプリ上で提供できる。ユーザーは新たなアプリをダウンロードする必要もない。

実際、ユーザーの声としても「アプリのダウンロードをしなくてもよい」「利用料金がかからない」「LINE内で表示できる」などの理由から支持を集めている。

「たとえば、飲食店に設置されたQRコードを読み取るだけで、すぐにLINEアプリ内でモバイルオーダーが可能になります ※4。ユーザーにとっても、店舗にとっても、これ以上ないほどシンプルな導線です」(谷口氏)
LINEミニアプリは「モバイルオーダー」「デジタル会員証」「順番待ち」「予約」など、実店舗のニーズに即したもの以外にも、ECや会員向けサービス、サブスクなどオンラインサービスの活用も進んでいる。
これらは開発会社が提供する「パッケージ」を導入することで迅速に実装できるが、企業や店舗のニーズに応じて「委託開発」や「自社開発」をすることもできる。
※4 LINEミニアプリで取得する登録情報や行動履歴などのデータは、利用開始時に利用者の許諾を得た場合のみ使用可能

実際に、飲食、美容、メーカー、ホテル、エンターテインメント、病院や薬局など、業界を問わず導入が加速している。
その代表例が、世界に2,300店舗以上展開する台湾発祥のグローバルティーカフェ「ゴンチャ」だ。
株式会社ゴンチャ ジャパンはネイティブアプリを活用せず、LINEミニアプリを通じてモバイルオーダーやギフトなど、複数の機能を統合的に展開。
さらにLINEミニアプリで取得したデータを活用した独自施策も行うことで、ユーザー満足度と売上の両方で成果を上げているという。

「LINEミニアプリ」誕生秘話
順調に拡大しているLINEミニアプリだが、ここに至るまでに紆余曲折もあった。
LINEミニアプリは2020年9月に正式リリースしたアプリプラットフォーム。実は2015年頃に実現に向けた挑戦が始まっていた。
当時はうまくいかずにクローズしてしまったものの、ほぼ同時期にリリースされた中国の「WeChat ミニプログラム」の急成長を目の当たりにし、再挑戦を決意。検証を重ねた結果、実現したのが現在のLINEミニアプリだ。
「調査と検証を重ねた結果、特に店舗で『アプリが思うようにダウンロードされず、接客のデジタル化が進まない』などのマーケット課題が大きいことが分かってきました。
この課題は長年ネイティブアプリの活用に積極的に取り組まれてきた企業ほど大きかった。そこで小売・飲食・美容などの実店舗系業種に注力し、LINEミニアプリを成長させてきました」(谷口氏)

LINEは多くのユーザーが毎日使っているため、常に顧客接点がある。実店舗関連の業種にターゲットを定め、「ダウンロード不要のお店アプリ」のポジションを取ることで、参画社数や利用ユーザー数は大きく伸びた。今ではネイティブアプリよりもLINEミニアプリを選択して活用する企業が増えているという。
LINEミニアプリをマーケットで拡大させてきた谷口氏だが、目指すゴールはまだその先にある。
「2025年からLINEミニアプリを全社的な注力プロダクトとして位置づけており、より一層推進していきます。
これまでは主に実店舗業種をターゲットとしてきましたが、ECやメディア、エンターテインメントをはじめとするオンライン業種にとっても価値あるアプリプラットフォームへと成長させていく予定です。

たとえば、LINEアプリ内からのアクセス導線の強化をはじめ、LINEミニアプリの検索性の向上や決済機能の提供、広告マネタイズ機能の実装、プラットフォーム機能の強化など多くのアップデートを進めていきますのでご期待ください」(谷口氏)
アプリ大量時代の新たな解決策として台頭したLINEミニアプリ。その挑戦は、まだ始まったばかりだ。
執筆:海達亮弥
撮影:竹井俊晴
デザイナー:髙木菜々子
編集:君和田 郁弥
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