回転寿司チェーン大手のスシローは、LINEチラシで集めた新規顧客をLINE公式アカウントとLINEミニアプリ(受付・予約機能)へとつなぎ、効果的に店舗集客へと結びつけています。こうしたLINE三段活用ともいえる本施策について、スシローを運営している株式会社FOOD & LIFE COMPANIESの小林慎弥氏に話を聞きました。
- ユーザー増加傾向の電子チラシで、販促キャンペーンを告知したい
- より多くの顧客にスムーズな来店受付・予約機能を提供し、店舗の利用体験を向上させたい
- LINEチラシで商圏内のユーザーにキャンペーンやサービス情報を配信
- LINE公式アカウントのメッセージ配信で継続的な情報発信
- LINEミニアプリ(来店受付・予約)で、スムーズな受付・予約機能を提供
- LINEチラシのフォロワー数は約7倍に成長(2023年11月→2025年3月)
- LINE公式アカウントの友だち数は1年間で約50万人増加
- LINEチラシのフォロワー獲得単価はKPIを定常的に達成
ターゲットは全世代。LINEを「オウンドメディア」と捉えるマーケティング戦略
日本が世界に誇る食文化といえば、やはり「寿司」。とくに回転寿司は、「リーズナブルかつハイクオリティー」と外国人観光客にも大人気で、年々、顧客が増加しています。この回転寿司市場をけん引しているのが、1984年創業のスシローです。国内に約650店舗を展開(2025年6月現在)。近年は台湾、中国、香港、タイなど、海外進出も加速し、各国でファンを増やしています。

スシローのマーケティング戦略について、小林氏は次のように明かします。
「スシローは、ファミリー層を中心に老若男女のお客さまにご利用いただいていることから、これまではテレビCMを中心に宣伝活動を展開してきました。近年はそこにSNSやYouTubeも加わり、デジタルツールを活用した施策の比重がどんどん大きくなってきています。中でもLINE公式アカウントは、弊社ではアプリやホームページと並ぶ“オウンドメディア”と位置づけており、国内の月間ユーザー数9800万人(2025年3月末時点)という圧倒的なリーチ力を持つ、販促戦略の要として活用しています」
スシローでは、店舗ごとにLINE公式アカウントを開設しており、小林氏が所属する広告宣伝部が一括で管理。月2回実施している販促キャンペーンの情報を基に、週2回程度のペースでLINE公式アカウントからメッセージを配信しています。
「飲食店のLINEにおける販促施策といえば、“割引”や“クーポン配布”がまず思い浮かぶと思いますが、弊社は原則、LINEではそうした値引き施策は行いません。クーポン目当てではなく、純粋にスシローのキャンペーン情報を受け取りたいというお客様が友だちになってくれているので、ブロック率も非常に低くなっています。かつ、300万人のターゲットリーチを実現できているのは、情報そのものの価値を感じていただいているからだと考えています。こうした背景もあり、LINE公式アカウントをWebサイトやアプリと並ぶ重要なオウンドメディアと位置づけ、戦略的に運用しています」

LINEチラシとLINEミニアプリで来店前のアプローチを深化
スシローは2020年7月に、大手外食チェーン店として初めてLINEミニアプリを活用した来店受付・予約を開始しました。
「もともと自社アプリに受付・予約機能を搭載しており、多くの利用者がいましたが、“アプリのダウンロード”というひと手間が新規利用の障壁になっていました。その点、LINEは多くのユーザーのスマホにあらかじめ入っているため、利用しやすい点が大きな強みです。現在は、ホームページの“受付・予約”ボタンを押した際も、自社アプリではなく、どなたでも受付・予約ができるようにLINEミニアプリへと遷移させています。また、LINE公式アカウントの下部のリッチメニューにも予約動線を設置、販促メッセージに興味を持ったユーザーが来店予約をスムーズにできるようになっています」

さらに同社は、2023年10月に月2回の販促キャンペーンを広く告知するため、メディアの一つとしてLINEチラシの活用をスタート。
LINEチラシは、特売情報を個店ごとに集約し、商圏内のLINEユーザーに配信できるチラシメディアサービスです。チラシを見たユーザーがそのお店を“フォロー”すると、LINEチラシのLINE公式アカウントから更新通知が届くようになり、同時に該当店舗のLINE公式アカウントに友だち追加されます。
これにより、ユーザーは地元のお得な情報をリアルタイムで受け取りながら、自分のお気に入り店を簡単にフォローでき、最新情報を確認できます。また、店舗側も効果的な新規リーチを実現し、効率的なマーケティングを実現できます。

「それまでLINE公式アカウントの友だちは、主に店舗内の告知を通じて集めていました。つまり、“店舗に足を運んでいただいたお客さまにしか、友だちになってもらえない”という状況だったのです。しかし、LINEチラシを活用すれば、来店前の新規顧客にもリーチでき、友だち追加を促すことができる。さらに、友だち追加後はLINE公式アカウントのメッセージ配信により、効果的に来店へつなげることができます」
同社はこれまでのLINEミニアプリとLINE公式アカウントの活用から、LINEチラシの導入により、認知から集客、その後のフォローまでをLINE上で一気通貫できるようになったのです。

LINEチラシのフォロワー数は7倍、友だち数は50万人増
「LINE公式アカウントの友だち数は大きく伸び、LINEチラシ導入後約1年で50万人増え、計300万人を超えました。LINEチラシを見て店舗に足を運んでくださった方も多く、その貢献度は確かなものがあると感じています。また、LINEチラシ経由の友だちはブロック率も低く、“純粋に新情報が欲しい”というニーズを持つユーザーの割合が多いように感じます」
実際、LINEチラシの全店舗合計フォロワー数は、導入翌月の2023年11月に比べて、2025年3月は7倍に増加しました。また、フォロー追加数が増えたことから、相対的にフォロー獲得単価は下がり、直近3カ月は同社のKPIを下回る金額で配信できています。

「LINEチラシは、自動的に近隣のおすすめ店舗が表示されるなど、商圏をベースに展開されるため、個店の認知や集客にとても有用だと感じています。例えば、新規やリニューアル店舗だけセールやキャンペーンを実施し、その情報をLINEチラシで配信すれば、新規獲得の費用対効果を最大化できます。今後、さらに効果的な活用法を模索していきたいです」
今後はLINEを軸にしたOne to Oneマーケティングを推進
LINEチラシ、LINE公式アカウント、LINEミニアプリと「LINEの三段活用」により、効果的に来店客数増加を実現しているスシロー。最後に、今後の展望について、小林氏に伺いました。
「これまでは商品力の強さを生かして、テレビCMはもちろん、LINE公式アカウントのメッセージ配信も“全配信”を基本としたマスマーケティング思考で成果を上げてきました。しかし、これだけ価値観が多様化した今の時代にあっては、ユーザー一人ひとりの属性や嗜好(しこう)に合わせたOne to Oneマーケティングがより必要だと感じています。その実現のためにもLINE活用は有効な手段だと思うので、まずは顧客データに基づいたセグメント配信にチャレンジしたいですね。
また最近、LINEチラシの画面上に店舗のURL(または電話番号)を掲載できる“チラシビューワー外部リンク機能”が実装されたと聞きました。当社もさっそく導入し、LINEチラシ確認後の導線をより強化したいですね。今後の各LINEサービスの機能拡充にも期待しています」
(公開:2025年7月、取材・文/相澤良晃、写真/慎芝賢)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です

企業名 | 株式会社FOOD & LIFE COMPANIES |
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所在地 | 大阪市
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事業内容 | フードサービス事業全般、その他周辺事業
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サービス | スシロー |