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2025.07.30
右から 株式会社SP EXPERT'S 代表取締役社長 窪田充氏 一般財団法人 島前ふるさと魅力化財団 常務理事 大野佳祐氏 LINEヤフー株式会社 経営企画・事業開発統括本部 事業開発部 部長 佐藤将輝
島根県の離島・隠岐諸島のうち、中ノ島の海士町(あまちょう)では、地域外に住みながらも多様な形で島に関わる「関係人口」の拡大に注力しています。2025年3月、その取り組みの一環として開発されたのが、LINEミニアプリ「miniama(みにあま)」です。島での体験を“ミッション”として楽しみながら地域と接点を持てるこのLINEミニアプリは、リリースからわずか3カ月で登録者数1万人を突破。断片的だった既存施策を有機的につなぎ、地域との関係を深める仕組みづくりをどのように実現したのか──開発を手がけたSP EXPERT'S代表取締役社長・窪田充氏と一般財団法人島前ふるさと魅力化財団の大野佳祐氏に話を聞きました。
コロナ禍で増えた“脱・東京”の動きが、ここ数年で著しく鈍化し、東京への人口一極集中が再加速しています。総務省によると、2024年の東京圏の転入超過は13万5843人となり、3年連続で前年を上回りました。特に「離島」と呼ばれている島々の人口減少は激しく、2015年の公益財団法人日本離島センターの発表によると、有人島の7割以上が人口500人未満となっています。
人口減に悩む離島や地方において、注目されているのが「関係人口」です。関係人口とは、移住する「定住人口」や観光で一時的に訪れた「交流人口」とは別に、さまざまな形で地域に関わる人々のこと。例えばその地域が好きで頻繁に訪れ、地域の人々との関係性を築いたり、今は別の場所で暮らしている地域出身者だったり、何らかの形でその地域に関わっている人を意味します。
関係人口の増加に向けて積極的に取り組んでいるのが、2014年にスタートした一般財団法人島前ふるさと魅力化財団です。
同財団では「魅力的で持続可能な学校と地域をつくる」というビジョンの下、島の魅力や可能性を発信しながら、さまざまな活動を展開しています。例えば、小・中・高校生を対象とした島留学の誘致、地域課題の解決を目的とした探究学習の推進、さらには隠岐島前高校と連携した公立塾「隠岐國学習センター」の設立・運営です。これらの活動を通して、継続的に都市部の人々との関係作りにも取り組んでいます。
こうした取り組みの中で、特に課題となっていたのが、海士町における関係人口(=海士町オフィシャルアンバサダー)の拡大です。財団の大野佳祐氏は次のように説明します。
「2025年5月時点で、海士町の人口は約2300人です。今後10年間でこの人口を維持することさえ難しく、地域住民だけで町を運営していくという考え方は、すでに限界を迎えています。そこで私たちは5年前から『さまざまな形で島に関わる関係人口を、いかにして地域経営を担う人口に転換していけるか』という視点で取り組みを始めました。その一環として導入したのが、アンバサダー制度です。これは、島のファンになってくださった方々を親善大使として認定し、島の情報を定期的に共有していく仕組みです。さらにこの取り組みを発展させるためには、観光などで島を訪れた人々を関係人口へとつなげていく、新たな接点が必要でした」(大野氏)
課題を持っていた大野氏が、販促DX支援を行うSP EXPERT'S 代表取締役社長の窪田充氏と出会ったのは2024年春のことでした。窪田氏はその状況を次のように振り返ります。
「共通の知人から『島根県の離島にエネルギッシュな若い人が集まっているから、一度行ってみるといい』と誘われました。そこで出張で都内に来ていた大野さんにお会いし、話を伺ったところ興味をひかれ、行くことになりました」(窪田氏)
訪れてみると、気さくでオープンな人柄の地域住民から大歓迎をうけ、窪田氏が少しだけ抱いていた「排他的な気風があるのでは」という懸念はたちまち吹き飛んだそうです。住民に海士町の取り組みや施策を尋ねたところ、興味深い取り組みや活動をいくつも紹介されましたが、「全体像がわかるパンフレットやWebサイトがなかったので、もったいないなと思いました」と振り返ります。
実は大野氏も同じことを考えていました。
「海士町に興味を持ってもらえるような取り組みはあったものの、俯瞰(ふかん)してそれらを見てもらえる仕組みはありませんでした。施策ごとの横連携もありませんでした」(大野氏)
観光で訪れた人を、いかにして海士町の関係人口として取り込むか。そして、町内のさまざまな取り組みを可視化・連携させ、さらなる地域活性化を実現するにはどうすればよいのか。こうした課題に対して、窪田氏が提案したのが「観光客が地域の住民と関わり、島の文化に触れられる「ミッション型ロイヤルティープログラム」でした。
その仕組みを実現するものとして、開発されたのがLINEミニアプリのminiamaです。開発には3〜4カ月を要し、その多くの時間はシステム構築ではなく「関係人口づくり」という目的にふさわしい内容にするための地域との丁寧なすり合わせに充てられました。特に、ミッションを提供する地域店舗や住民との合意形成は欠かせないステップでした。幸いにも、財団の活動に共感し「ぜひ協力したい」と前向きに参加する住民や店舗ばかりで、順調にプロジェクトを進めることができました。
では、観光客は実際にどのようにminiamaを利用できるのでしょうか。
観光客は島に到着後、ミッションを紹介するポスターのQRコードを読み取ることでminiamaに参加できます。その後、島内のさまざまなミッションに挑戦し、各ミッションをクリアーすることで「あまポイント」を獲得します。貯まったポイントは地域通貨「ハーン」への引き換えや、海士町の海に寄付といった形で利用できます。
miniamaが提示するのは、島の日常を体験できるミッションばかりです。 例えば
といった、地域の暮らしを感じられる体験が用意されており、観光客が自然と海士町に親しみを持てるよう工夫されています。
「通常の観光ならば、“行って、楽しかった”で終わってしまいます。しかし、関係人口としてつながってもらうには、地域住民との関わりや会話が不可欠です。島の文化や歴史を知ってもらうことで、観光客は一時的な訪問者から「第二の故郷」のように感じてもらえる存在へと変わっていきます。そうなれば、再訪につながる可能性も高まります」(窪田氏)
こうして2025年3月4日にリリースされたminiamaは、わずか3カ月足らずで登録者数は1万人を突破しました。島に到着した観光客がフェリー乗り場ですぐに存在を知ることができる動線設計や、プレスリリース・広報活動によって注目を集めたこと、miniama自体の参加しやすさやミッションを通してつながる楽しさといった魅力も要因と考えられます。
登録者ごとのミッション達成率はデータで可視化されており、今後はこの達成率をどのように高めて海士町のファン、さらには関係人口になってもらうかが鍵です。
「一人でも多くの方に海士町に興味を持ってもらい、実際に訪れてファンになっていただくことが、次の展開につながります。今回、短期間で多くの方がminiamaに登録してくれました。LINEという誰もが気軽にアクセスできるプラットフォームを採用したことが大きな要因だと思います。今後は、海士町との最初の接点をいかに増やすかを検討しながら、海士町の魅力を伝え、関係人口のさらなる創出に尽力していきたいです」(大野氏)
最後に、窪田氏も今回の施策を次のように振り返ります。「地域施策を実現するには、海士町のように、その地域が目的に向かって高い熱量を持っていることが必要です。その熱量さえあれば、システム面は私たちがしっかりサポートいたします。今後、さまざまな地域とのコラボレーションを実現し、自治体との架け橋となっていきたいです」
(公開:2025年7月、文/岩﨑史絵)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です
株式会社SP EXPERT'S
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