41都道府県・55クラブ(2025年9月時点、B1-B3クラブの合計数)を擁し、各地域に根づいた運営を行う国内男子プロバスケットボールリーグ・B.LEAGUE(以下、Bリーグ)。LINE公式アカウントの友だち数が837万人(2025年9月時点)を誇り、入場者数や売り上げも伸長しています。LINE公式アカウントやLINEミニアプリを活用した挑戦的なデジタル戦略で新たなファン層を取り込み、観戦体験の向上と地域経済への貢献を実現してきました。集客力に主眼を置いてきたというBリーグチェアマンの島田慎二氏(以下、島田氏)にその戦略や成果、今後の展望について話を聞きました。
- 新たなファン層を開拓し、継続的に関係を構築してファン化を促したい
- ユーザー体験の利便性を向上したい
- 観戦体験の向上と地域経済への貢献を通じ、持続的な成長を実現したい
- Bリーグ、クラブ、マスコットキャラクターの各LINE公式アカウントから情報発信し、ファン化を推進
- LINEミニアプリを活用し、飲食店のモバイルオーダーや順番待ちシステムを構築
- ALL-STAR GAME開催地で地元の飲食店などの協力を得てデジタルスタンプラリーを実施
- BリーグのLINE公式アカウントの友だち数は837万人、B1-B3クラブの総友だち数は177万人を達成
- モバイルオーダーで混雑を解消し、ユーザーの利便性を向上
- 順番待ちシステムで発行した整理券のうち93%が利用。待ち時間ほぼゼロを実現し、アリーナ体験が改善
- ALL-STAR GAME開催地でのスタンプラリーに多くのユーザーが参加し、地域経済に貢献
デジタルを活用し、ファンとの接点を構築
2016年に開幕したBリーグは、2050年に創りたい世界観としてBリーグのビジョン「感動立国」を提言しています。実現に向け、地域に根ざしたクラブ運営やデジタル活用で人気を高めてきました。さらに、2022年公開の映画「THE FIRST SLAM DUNK」や、2023年にフィリピン、沖縄、インドネシアの三カ国で共同開催された「FIBAバスケットボールワールドカップ」での日本の活躍が追い風となり、2023〜24年シーズンの総入場者数は約452万人と3シーズン前の3.5倍に、売り上げは約632億円で2倍超に達しました。
このBリーグの成長をけん引してきたのが、2017年から副チェアマン(副理事長)、2020年からチェアマン(理事長)を務める島田氏です。
「Bリーグでは『ココロ、たぎる。』をスローガンに数々の変革に取り組んできましたが、特にデジタル技術の活用を重視しています。バスケットボールが野球やサッカーに次ぐ“第3のプロスポーツ”ともいわれる中で、他の競技との差別化の手段としてデジタル戦略を発足当初から強く打ち出してきました。例えば、Bリーグが誕生したころはスマートフォンが定着し始めた時期だったので、 “スマホファースト”を軸にしたファンとの接点づくりを進めています」
LINE公式アカウント活用で新規ファンを開拓し、友だち数837万人
“スマホファースト”の施策の一環として、Bリーグは開幕(2016年)と同時にLINE公式アカウントを開設。ファンとのコミュニケーションを深めること、新たなファンを得ることを目的に運用を開始しました。
取り組みを進める中でBリーグのLINE公式アカウント以外に、各クラブでの個別運用を開始。さらには各クラブのマスコットキャラクターを主体としたLINE公式アカウントの運用も進むなど、ファンとのつながりを強化しています。
「従来のファンに加えて、スポーツ観戦に関心がなかった層にもLINE公式アカウントを通じてアプローチし、新たなファン層を開拓してきました。例えば、各クラブ主催のイベント参加者にLINE公式アカウントの友だち追加を促し、継続的に情報を届けることで来場につながるケースも増えています。近年ではバスケットボールのファンの半数以上を女性が占めるようになり、20~40代のファミリー層も多くなりました」
こうした地道な活動の積み重ねにより、LINE公式アカウントのBリーグの友だち数は837万人、B1-B3クラブの総友だち数は177万人(ともに2025年9月時点)に達しています。
「我々は友だち数を増やすことにかなり注力してきました。友だち数837万人というのは、Bリーグの年間入場者数の約2倍に当たる規模です。“数は力”という言葉のとおり、一度に800万人超へ情報を届けられるのは大きな武器です。
また、LINE公式アカウントの大きな強みは、メッセージの開封率の高さと即時性にあります。チケットの販売やグッズ情報、各種告知など、どのような用途でもすぐにメッセージが開封されて情報が伝わり、購入などの行動にスピーディーにつながる点は大きな魅力です。我々にとってLINE公式アカウントは、新規ユーザーとつながり、ファンになってもらうための強力なコミュニケーションツールなのです」
LINEミニアプリでユーザーの利便性向上を実現
Bリーグは観戦体験をより快適でスマートなものに進化させる新たな施策として、ファンの満足度向上やリピート率の強化を目的に、アリーナ体験(観客が会場で過ごす体験全般)のDX化も進めています。
その取り組みの一つが、企業や店舗のサービスをLINE上で提供できるサービス「LINEミニアプリ」の活用です。
例えば、2023年5月に開催された「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2022-23」では、アリーナ内の飲食店でLINEミニアプリによる事前注文から決済まで行えるモバイルオーダーの実証実験を実施。これにより観客は列に並ばず注文品を受け取ることができるようになり、以後モバイルオーダーを導入しています。BリーグがLINEミニアプリを採用した背景は、LINE上で利用できる利便性にありました。
「日常生活で“アプリのダウンロード疲れ”を感じる方もいる中、わざわざ専用アプリを作ってダウンロードしてもらうより、すでに多くの方が使っているLINE上で完結する方が便利だと考えました。利用ハードルの低さ、アクセスの手軽さもLINEミニアプリの圧倒的な強みです」
この取り組みは飲食店の注文だけに留まりません。2025年1月に開催された「りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2025 IN FUNABSHI」では、グッズ販売に順番待ちシステムを試験的に導入し、LINEミニアプリ上でデジタル整理券を発行。当時予定していた400枚はすぐに発行終了しました。
通常購入では最大3時間待ちの列ができることもありましたが、整理券を取得した来場者は、自身の番号が呼び出された際にLINEで通知を受け取り、行列に並ばずにスムーズに商品を購入できました。発行された整理券のうち93%が利用されるなど、その利便性が証明されました。
「1月のALL-STAR GAMEでは、テスト的にデジタル整理券を導入しましたが、通常購入では早朝から列ができ、長時間待つ状況も発生していたのです。そうした課題をなんとか解決したいという思いから、5月に横浜で開催された『りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2024-25』では、グッズ販売を全面的に整理券に切り替え、“待ち時間ゼロ”にチャレンジしました。これにより購入者は長時間並ぶ必要がなくなり、現場のスタッフも誘導に集中できるのでスムーズに案内ができました」
実際にFINALS終了後に実施した利用者アンケートでは、整理券システムへの満足度は80%半ばと、高い評価を得ることができました。
「『試合開始に間に合わないから、もう買うのはやめよう』となってしまうと、ファンにとっても運営側にとっても機会損失になります。そうしたロスを防ぐことができるこの仕組みは、画期的なものだと思っています。Bリーグに限らず、ライブやフェスなどほかの大型イベントとも相性が良いと思うので、そうした場面でも十分に活用できるはずです」
地域振興に寄与するデジタルスタンプラリーは参加者・参加店舗とも拡大
また、Bリーグは「バスケットボールと街の夢の共演 B.STYLE」をコンセプトに、地域を巻き込んださまざまな取り組みを長年展開してきました。その一つが、LINEミニアプリを活用したデジタルスタンプラリーです。
デジタルスタンプラリーとは、LINE上でデジタルスタンプを3つ集めると、抽選で景品が当たる仕組みで、2023年の水戸大会を皮切りに、2024年の沖縄、2025年の船橋と3年連続で開催されました(※)。
LINEミニアプリは2024年開催時から導入されました。
島田氏はそのきっかけを振り返ります。
「水戸大会の開催にあたり地元の自治体などの方々と対話する中で、『せっかく全国から訪れてもらえるなら、アリーナと駅を往復するだけでなく、地域のお店にも立ち寄ってほしい』という声が多く挙がりました。それを受け、回遊を促す手段としてスタンプラリーを始めました。より手軽に参加できるデジタルツールの活用が良いだろうという話になり、2023年開催時にLINE上で楽しめる仕組みを構築しました。2024年からはLINEミニアプリで実装し、多くの方にご参加いただいています」
2025年開催の船橋では参加者が7,500人近くになり、参加店舗も100店舗以上に拡大しています。参加者の約7割が1,000円以上の買い物をし、100人以上の来店を記録する店舗もありました。地域経済の活性化につながるとともに、来場者との接点を拡大する手段としても期待されています。
「スタンプラリーの取り組みに賛同し、参加を希望する店舗も増え続けています。『またあのお店に行きたい』といった声も多く、県外からのリピーターの創出や、地元の方にとっても地域の魅力を再発見する機会になっています」
B.革新の中核を担うLINE公式アカウント・LINEミニアプリの役割
Bリーグでは、クラブ経営の強化や長期的視野で投資を行う環境を整えるための「B.革新」を推進中です。B.革新とは、2024年にBリーグが提言した2050年に創りたい世界観「感動立国」を実現するための改革です。「強化」「経営」「社会性」の3つの軸に沿って2026年からリーグ構造の変更を行うなど、大きな変革を予定しています。
その狙いについて、島田氏はこう話します。
「B.革新では競技力に加え、事業力でもクラブを分類する世界でも類を見ない取り組みを行おうとしています。スポーツクラブにとって、“血液”のように重要なのは集客力です。集客力があればスポンサーがつき、クラブの経営が安定します。その力でアリーナの整備や運営を継続していくことで、クラブの成長はもちろんリーグ全体の存在感が高まりますし、アリーナをライブなど別のイベントでも使用可能です。この三本柱のサイクルを実現することで、地域活性化につながると考えています」
集客力の強化のために構想を立てているのが、Bリーグの保有する会員データと、ユーザーのLINEアカウントなどのデータのマーケティング活用(※)による観戦体験の向上です。
LINEアカウントのユーザーデータなどの取得・活用にはユーザーによる認証・同意が必要です。
例えば、現在の運用ではチケットを一人が複数人分購入した場合、購入者以外の来場者情報は把握できません。この課題に対し、同行者を含めた来場者のデータ取得とマーケティング活用を進めていく方針です。データ活用の推進によって、来場者にとってもLINE上でチケット情報や購入履歴の一括管理ができるようになるなど利便性が向上します。また、観戦履歴や購買傾向に応じたサービス提供を受けられるような仕組みも検討中です。
こうした取り組みを通じ、今後もBリーグやクラブの継続的な成長を目指していくと島田氏は力を込めます。
「バスケットボール界の発展にはクラブの成長が欠かせず、その鍵は“集客”です。集客には、コンテンツ強化や地域連携など複合的な施策が必要ですが、それをデータで可視化し成果につなげる手段として、我々はLINE公式アカウントやLINEミニアプリをマーケティングの中核に据えてきました。LINEは年齢を問わず使いやすく、情報発信だけでなくデジタル整理券やスタンプラリーなど多彩な機能でファンとの接点を広げてくれます。我々もその可能性に気づき、近年スピード感を持ってチャレンジを重ねてきました。それらの取り組みは業種を問わず応用できるはずなので、LINEを活用してみてはいかがでしょうか」
(公開:2025年10月、取材・文/杉原由花、POWER NEWS編集部、写真/川嶌 順)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です
| 企業名 | 公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ |
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| 所在地 | 東京都文京区
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| 事業内容 | 国内男子プロバスケットボールリーグの振興や試合運営にかかる業務全般
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| サービス | B.LEAGUE |