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2026.03.24
株式会社POCKET RD 代表取締役COO コンシューマービジネス本部長 西川 由衣 氏(中) ディレクター 窪田 哲也 氏(左) ディレクター 宮澤 宏治 氏(右)
2026年2月、LINEミニアプリにおいて「アプリ内課金」機能(IAP)の提供を開始しました。これにより、LINEミニアプリ内で収益を上げるビジネスモデルの可能性が大きく広がっています。本機能のリリース前から先行導入し、実装・検証を進めてきた企業の1つが、株式会社POCKET RD(以下、POCKET RD)です。同社がLINEミニアプリで配信するパズルゲーム『もふもふ大脱走』は、自社アプリ版と比較してユーザー数1500倍、売り上げ167倍という大きな成果を達成しています。LINEミニアプリでゲームを配信することのメリットや、自社アプリ(ネイティブアプリ)版と比べた場合の優位性などについて、POCKET RDの3氏に話を聞きました。
2017年創業のPOCKET RDは、「3Dアバター生成技術」と「ブロックチェーン技術(Web3)」を軸に、XR(クロスリアリティ)領域のサービスを多数提供しているスタートアップ企業です。「ニッポン発。今、ここにない未来を創る」をビジョンに掲げ、アバターを簡単に作成・運用できるインフラの構築、Web3領域への参入をめざす企業の事業支援などを行っています。
同社は2025年9月にLINEミニアプリでパズルゲーム『もふもふ大脱走』を配信しました。猫のブロックを横一列に並べると、「ニャー!」と大脱走。たくさん脱走させると高得点を獲得できるというシンプルなルールながら、スキルシステムやキャラガチャ要素もあり、繰り返し遊びたくなる奥深い面白さが魅力です。西川氏は、『もふもふ大脱走』の開発の経緯について次のように明かします。
「『もふもふ大脱走』は、もともとコンシューマー向けのアバター生成アプリ内のミニゲームとして開発しました。その評判が思いのほか良かったため、単体のアプリとして切り出して配信することにしたのです。最初はTelegramで、次いでApp StoreおよびGoogle Playで配信しましたが、競合ゲームが多くレッドオーシャン化しているプラットフォームでは、なかなかダウンロード数が伸びず……。そこでストア型とは異なる接触導線を持ち、多くのユーザーの目に触れる可能性があるLINEミニアプリ版を配信することにしたのです」(西川氏)
LINEミニアプリ版の開発について、担当の窪田・宮澤の両氏は次のように振り返ります。
「もともと『もふもふ大脱走』はUnity製です。基本的にはそれをLINEブラウザ上で動くようにWebGLで構築するだけなので、LINEミニアプリ版の開発の手間はほとんどかかっていません。ただ、ブラウザ上で軽快に動くように、自社アプリ版では約250MBだった容量を、画像サイズを変更するなどして50MB以下に抑えました。やはり重ければ重いほどゲームの立ち上がりが遅くなり、それが離脱につながってしまいます。なるべく容量を抑えることが、LINEミニアプリでゲームを配信するポイントです」(窪田氏)
同社ではLINEミニアプリ版『もふもふ大脱走』のKPIとして、インストール数、アクティブユーザー数、継続率、ARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均売上)を中心に設定しています。
「ゲーム配信サービスとして、一般的なKPIです。そして、どのゲームにも共通していると思いますが、KPIを達成するうえで最大のネックになるのが集客です。その点、LINEミニアプリは、LINEというプラットフォームの強みを生かして、広告以外にもさまざまな集客の施策を実行できるのが強みだと感じています」(宮澤氏)
実際、同社ではLINEミニアプリ版『もふもふ大脱走』の配信開始から間もなく、大人気LINEスタンプ「にゃーにゃー団」とのコラボイベントを開催しました。期間中、ゲーム内で「にゃーにゃー団」のキャラクターが手に入る限定ガチャを実装。このことをきっかけに、友だち数500万人以上の「にゃーにゃー団」側のLINE公式アカウントでもコラボ情報が発信され、多くのファンが『もふもふ大脱走』に流入しました。
「コラボイベント期間中の1カ月間で、ユーザー登録数は3万人以上増加しました。仮に自社アプリ版で同規模のユーザーを広告のみで集客する場合、約1000万円の広告費が必要になる試算です。さらに、LINEならではの強みとして、オープンチャットも活用しています。『もふもふ大脱走』のルームを運営側で開設し、イベント情報や攻略の話題を共有できる場を用意しました。既存ユーザーが盛り上がるのはもちろん、ゲームをまだプレイしていない猫好きのユーザーが参加し、そのままゲームに興味を持つケースも少なくありません。こうした無料で活用できる接点も、新規ユーザー集客にもつながっています」(宮澤氏)
そして、集客後の大きな課題となるのが「収益化」です。『もふもふ大脱走』では、アプリ内課金(IAP)とアプリ内広告(IAA)を収益の柱にしています。
LINEミニアプリにおけるアプリ内課金機能は、2026年2月に正式リリースされました。本機能を利用することで、認証済ミニアプリ内でデジタルコンテンツの販売が可能です(利用には事前申請と審査が必要)。POCKET RDではこの正式リリースに先駆け、提供開始前の段階からIAP機能を実装。先行環境での検証を重ねながら、収益導線の最適化を進めてきました。
「IAPについては、ガチャを引くためのゲーム内通貨「ジュエル」を販売しています。この課金システム自体は、自社アプリ版とほぼ同じ仕様で、ユーザーにとってもなじみのある仕組みのため、LINEミニアプリ版への実装にあたって大きな混乱はありませんでした。IAAについては、ゲーム内で動画広告を視聴するとジュエルを獲得できる、こちらも一般的な仕組みを採用しています。収益構成比はIAPが約80%、IAAが約20%です」(窪田氏)
また、継続率を高めるための施策として、同社ではLINEアプリのほかのサービスも活用しています。
「まずLINE公式アカウントでは、イベントの告知をしたり、休眠ユーザーに対して再訪を促したりと、状況に合わせて柔軟にメッセージ配信をしています。タイミングなどの条件がそろえば、配信日のアクティブ数が前日の2〜3倍に跳ね上がることもめずらしくありません。自社アプリでもプッシュ通知はできますが、一度ゲームを離れたユーザーは、まずアプリを起動してくれず、通知メッセージも開封してくれません。しかし、日常的に使われているLINEであれば、メッセージの開封率が高く、一度ゲームを離れたユーザーを呼び戻すことができます」(窪田氏)
「LINE VOOMでは、季節イベントの告知に加え、ゲームに登場する51体のキャラクター紹介動画なども配信しています。キャラクターの可愛らしさに惹かれてゲームを始める新規ユーザーも少なくありません。こうした施策の効果もあり、LINEミニアプリ版は従来の自社アプリ版と比べて、ユーザー数は1500倍に拡大、売上は167倍に成長しています。自社アプリ版では十分にリーチを広げきれていなかったこともあり、なかなかインパクトのある数字で運営側としては驚きの結果です」(宮澤氏)
LINEミニアプリを活用した施策が奏功し、急成長を続けている『もふもふ大脱走』。あらためて、LINEミニアプリでゲームを配信することの意義について、窪田・宮澤の両氏に伺いました。
「まず開発者の視点から、自社アプリと比較して大きく二つのメリットがあると思います。一つ目は、工数を最小限にとどめられること。例えば、新規開発する場合、自社アプリもLINEミニアプリもゲーム本体の制作工数はそれほど変わらないと思います。ただし、前述のLINE公式アカウントやLINE VOOM、オープンチャットのほか、LINEにはシェア機能や友だち紹介機能など、ゲームを継続的に運営していくために必要な多くの機能があらかじめ準備されています。そのため、LINEミニアプリ版では、それらの機能基盤を一から構築する必要がありません。一方で、自社アプリだとこれらゲームに付随する、さまざまな機能を自分たちでつくらなければいけません。この差は大きいと思います。
そして二つ目は、審査のスピードです。アプリストアの審査は時間がかかることが多く、アップデートの度にも審査をクリアしないといけません。そこで数週間も足止めを食らい、スケジュールが大幅にずれてしまうことも……。そうなると、例えば季節イベントなどに与える影響は甚大です。その点、LINEミニアプリは審査のスピードが早いので、開発側としてはとてもありがたく思っています」(窪田氏)
「LINEミニアプリは、やはり“LINEという圧倒的なユーザー数を誇るプラットフォームの一部である”ということが非常に大きいと感じています。自社アプリは、基本的にクローズドの世界。しかしLINEには、LINEを活用してビジネスをしている法人もたくさんいる。例えば、キャットフードのメーカーさんとコラボして、互いのLINE公式アカウントで告知し、ユーザーを集客するといった取り組みもしやすいはずです。ビジネス拡大の可能性という点でも、LINEミニアプリには期待できます」(宮澤氏)
最後に、西川氏に『もふもふ大脱走』の今後の展望についてお聞きしました。
「LINEミニアプリ版で集客したユーザーを保持しつつ、さらに売り上げを伸ばしていけるような施策を続けていきたいですね。ゆくゆくはペット関連や飲食業態の企業とコラボして、猫たちのキャラクターIPでも収益を上げられる仕組みをつくりたいと思います。また、ゲームのプラットフォームとしてLINEミニアプリの優秀性はよく分かったので、新たなゲーム開発にもチャレンジしたいです。まず試験的にLINEミニアプリでゲームを公開し、評判が良かったら内容をさらに充実させて自社アプリ版に移行する。そのような戦略も効果的かもしれません。いろいろな可能性を探りながら、LINEミニアプリでゲーム事業を拡大させていきます」(西川氏)
(公開:2026年3月、取材・文/相澤良晃、写真/慎芝賢)
本事例のサービス「LINEミニアプリ」について、詳しく知りたい方は「LINEミニアプリ スタートガイド」をご確認ください。(PDF資料・無料)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
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