株式会社大髙商事(以下、大髙商事)が展開する「じげもんちゃんぽん」は、東京・武蔵境発のちゃんぽん専門店です。同社はLINE公式アカウントを積極的に活用し、毎週定期配信のクーポン、リサーチ機能を活用した満足度調査、そして注文タブレットと連動した友だち集めなど、多面的な施策を実施しています。来店につなげる取り組みについて、同社の村岡優一氏(以下、村岡氏)と、平湯耕三氏(以下、平湯氏)に話を聞きました。
- 直営9店舗で運営するLINE公式アカウントの友だち数を、1年で計3万人に増やしたい
- 友だち追加をすると「友だち限定」でいつでも利用できる「野菜増し無料クーポン」を配布
- 毎週月曜日にクーポンを配信。2週間の使用期限を設け、利用できるクーポンの選択肢が常時3つある状態を維持
- リサーチ機能を用いた月次の満足度アンケートを実施し、得られた回答は現場改善施策や人事評価に反映
- 取り組み前は1万4,000人(2025年8月時点)だった友だち数が、2026年5月時点で3万人超を達成
- クーポンを繰り返し利用するユーザーを可視化し、再来店の実態把握に寄与
- リサーチ機能を用いたアンケートに最大月600件の回答を収集。店舗改革のスピードが向上し、現場の自発的改善行動が活性化
「30秒の魔法」で人々を魅了するじげもんちゃんぽん
2017年に東京・武蔵境で誕生したちゃんぽん専門店「じげもんちゃんぽん」。大髙商事の代表が長崎出身ということもあり、同社はもともと「長崎の食文化を東京に広めたい」という思いの下に居酒屋「じげもんとん」を運営し、メニューの一品としてちゃんぽんを提供していました。
その後、「もっと多くの人にちゃんぽんを食べてもらいたい」と「じげもんちゃんぽん」を開業しました。ライセンス店舗を入れて全国27店舗(2026年5月時点)、内9店舗を本社が直接運営。フードコートから路面店まで多彩な立地で展開し、ファミリー、シニア、ビジネスパーソンと幅広い客層に親しまれています。
「じげもんちゃんぽんは、『毎日食べたくなる、中毒性のあるちゃんぽん』をコンセプトに掲げ、スープのマイナーチェンジを繰り返しながらブランドを磨き続けています。最大の特徴は、『30秒の魔法』と呼ぶ調理方法です。炒めた具材と麺を30秒間スープで煮込むことによって、野菜・麺・スープが一体化した独自のコクが生まれます」(村岡氏)
目指すは「友だち数3万人」!体制を刷新して再始動へ
じげもんちゃんぽんは2021年から各店舗でLINE公式アカウントを導入し、来店促進に活用してきました。ただ、長年運用を重ねる中で課題も浮上。当時の状況を村岡氏は次のように振り返ります。
「LINE公式アカウントで友だちを集め、お客さまのリピーター化や売り上げの向上を目指していましたが、メッセージ配信の内容は店舗任せになっており、戦略的な運用ができていませんでした。配信のタイミングも、月1回定期的に配信する店舗もあれば、気が向いた時に配信する店舗もあり、バラバラで統一されていなかったのです」(村岡氏)
転機が訪れたのは、2025年8月のことでした。同社の決算期の節目に合わせ、「来期の1年間で、直営9店舗のLINE公式アカウントの友だち数3万人を目指す」という明確な目標を設定し、店舗運用から本社での一括運用へと体制を刷新したのです。2025年8月時点で、直営9店舗の友だち数は合計1万4,000人でした。
「数字を設定した時は、正直に言うと無理だと思いました。しかし『達成のために何をするか』を考えていくと、だんだん道筋が見えてきたのです。例えば9店舗で目標人数を割ると、1日10人集めれば届く。さらにランチで5人、夜で5人増やしていこう、と人数の分解を行ううちに現場も動きやすくなりました」(平湯氏)
選択肢を設け、来店意欲を喚起
「友だち数3万人」の目標を達成するために、これまで各店舗が配信していたメッセージを村岡氏が中心となって「毎週月曜日の11時を目安に、全店舗メッセージを一括配信」に切り替えました。
単に配信を一元化しただけではありません。力を入れたのは、友だち集めの仕組みづくりでした。店頭での案内方法を見直すだけでなく、LINE公式アカウントのクーポン機能やリサーチ機能を活用した取り組みを開始したのです。
例えばクーポンは、ユーザーがLINE公式アカウントを友だち追加する大きなきっかけになります。じげもんちゃんぽんでは、友だち追加をすると「友だち限定」でいつでも利用できる「野菜増し無料クーポン」を配布。友だち追加している間は常時利用できるため、ブロック率が抑えられるというメリットもあるそうです。
さらに毎週月曜日には、「味玉」や「餃子」無料などのお得なクーポンをメッセージで配信しています。
「毎週同じクーポンを配信しても変化がないので、毎月のマネージャー会議で店舗の意見を参考にしながら『来月のこの週は、このクーポンを配信しよう』『このメニューの方が喜ばれるのではないか』と話し合いながら決めています。また、居酒屋業態とちゃんぽん業態でクーポン内容が異なるため、グループ配信機能を活用して対象店舗ごとに配信を出し分けています」(村岡氏)
配信するクーポンの使用期限は2週間で設定。期限を設けることで、友だちとなったユーザーは常時利用できる「野菜増し」のほか、先週配信されたクーポン・今週配信されたクーポンと3種類の中から選ぶことができます。選択肢が増えることで店舗に行くモチベーションにもなるため、自然とリピートを促せる仕組みです。
店舗内にも友だち追加を促す工夫があります。一つは直営店で導入している注文用タブレット上で友だち追加の特典を告知することです。さらにトッピングの注文画面に「LINE公式アカウントを友だち追加いただくと、このトッピングが無料になります」と案内を出しています。
ただ、すべての店舗でタブレットを導入しているわけではありません。その場合は、注文時や入店時に店舗スタッフが友だち追加の案内を行いますが、お昼時など多忙な時間帯は声がけができない場合もあります。
「そうした時のために、LINE公式アカウントの案内を描いた名刺サイズの紙を各店舗で用意しています。席のご案内時や商品の提供時にその紙をお客さまに渡して『よろしかったら友だち追加していただくと、野菜増しが無料になります』と案内しています。すると約7〜8割くらいのお客さまが友だち追加してくださるので、地道に友だち数を増やしています」(平湯氏)
リサーチ機能で店舗改革のスピードが向上
じげもんちゃんぽんではLINE公式アカウントのリサーチ機能も活用し、抽選で看板商品の「濃厚鶏豚骨ちゃんぽん」が無料になるアンケートを毎月実施しています。特典をきっかけにアンケートの回答を促すよう工夫しました。
アンケート項目では、以下5つの項目を5点満点で評価してもらいます。
(1)店の活気
(2)清潔感
(3)料理のクオリティー
(4)再来店意向
(5)友人・知人への推奨意向
以前は月数件の覆面調査で品質管理をしていましたが、リサーチ機能の活用により月100〜600件規模のフィードバックを収集できるようになりました。アンケート結果は毎月集計してマネージャー会議で分析し、現場改善施策や人事評価にも反映させています。
「リサーチ機能を用いてアンケートを実施することで、覆面調査に比べてよりリアルな数字として現れていると思います。何より、お客さまが来店した翌日くらいに回答される方も多いので、今起きていることにすぐ対処できるというメリットもあります。タイムラグのない現場改善が一番大きな変化でした」(平湯氏)
店舗ごとにスコアを可視化することで、改善すべき課題が明確になります。同社ではアルバイトスタッフにまでアンケート結果を共有。課題に対しての現場全体の緊張感と改善意欲が高まったといいます。
新規ファンを増やすための取り組みは続く
じげもんちゃんぽんではさらに友だち数を増やすため、新しい取り組みも始めました。それは新規店舗の開店時に大々的に告知をすることで、オープン前から新店舗のLINE公式アカウントの友だちになってもらうという施策です。
事前に友だち追加したユーザーには看板商品を格安で提供するという特典を用意したことで、新店舗の開店前からユーザーを囲い込むことができました。
こうした工夫が実を結び、2026年5月時点ですでに友だち数は目標の3万人台を突破。最初こそ「友だち数3万人なんて無理だ」という意見が大半でしたが、高い目標設定は現場のモチベーションにも好影響を与えました。例えばある店舗では、「できる」という自信が現場の自発的な行動を引き出し、目標の2,000人を大きく上回る約5,000人の友だちを集めたそうです。
この1年の取り組みを通じ、村岡氏は次のような所感を述べています。
「当初はクーポンを配信して友だちを増やす、ドライな仕組みづくりとして捉えていました。しかし1年取り組んでみると、お客さまがクーポンを1回だけではなく、2回、3回と繰り返し使ってくれることがデータとして分かり、リピートしていただいていることを実感しました。ただ配信しているというより、来店してもらうためのコミュニケーションが生まれたと感じています」(村岡氏)
現在同社は、直営店以外の店舗でのオペレーション負荷を軽減し、LINE公式アカウントの友だち集めを促進するために、LINEレストランプラスのモバイルオーダー機能に注目しているとのこと。「注文からLINE公式アカウントの友だち追加までLINE上で完結できるようにモバイルオーダー機能を導入し、さらに満足できる店舗体験を提供していきたいです」(平湯氏)と話します。
今後じげもんちゃんぽんでは、ユーザーとのコミュニケーションにAIの有効活用も視野に入れているといいます。新しい体験を提供することで、より利便性を高めながらファンを増やしていきたい考えです。
(公開:2026年7月、取材・文/岩﨑史絵、写真/山﨑美蔓)
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