あさひ製菓株式会社(以下、あさひ製菓)は、「山口のしあわせの真ん中に。」をモットーに、山口県で地域密着経営を続けている老舗菓子店です。同社はベーカリー業態の「Shuklevain(シュクルヴァン)」で、2年ほど前からLINE公式アカウントの本格的な運用を開始しました。「友だち紹介クーポン」や「友だち追加用QRコードのレシート印字」を活用し、店舗スタッフに負担をかけない友だち集客に成功しています。紙のチラシからLINE公式アカウントへとシフトを進める同社の取り組みについて、販売管理部の掛水崚介氏(以下、掛水氏)に話を聞きました。
- 新聞折り込みチラシに代わる販促手段を導入したい
- シュクルヴァン6店舗のLINE公式アカウントを開設
- 友だち紹介クーポンを活用し、店舗での声かけに依存しない友だち集客施策を実施
- シュクルヴァン6店舗で2025年4月より友だち追加QRコードをレシートに印字し、来店ユーザーの友だち追加を促進
- 2025年5月からショップカードを活用し、リピーター化を促進
- 施策時にメッセージ配信でリマインドを実施
- 友だち紹介クーポンを配布した期間内で新規友だち追加したユーザーの約半数が、友だち紹介クーポン経由を記録。そのうちの約3割が実際に来店し、獲得したクーポンを利用
- ある店舗では、友だち紹介クーポン経由で友だち追加したユーザーのブロック率が、店舗で友だち追加したユーザーの4分の1程度と低い数値を記録
- 2025年4~6月で友だち追加したユーザーのうち、37%がレシートQRコード経由
- レシートQRコード経由で、6店舗合わせて3カ月で平均365人の友だち集めに成功
- 駅ナカ店ではレシートQRコードを導入したことで、友だち追加数が約5倍に増加
- メッセージ配信で案内した結果、ショップカードの取得率は6店舗で25%以上(2025年8月時点)を記録
新聞折り込みチラシに代わる代替手段を模索
山口県柳井市に本社を置くあさひ製菓は、1917年創業の和洋菓子製造販売企業です。2025年8月時点で、和洋菓子を幅広く扱う「果子乃季」(34店舗)、カフェ併設の洋菓子店「CHOU CHOU(シュシュ)」(3店舗)、店内で焼いたパンを提供する「Shuklevain(シュクルヴァン)」(7店舗)など、3ブランドを展開しています。
その中でも、LINE公式アカウントの活用に特に力を入れているのが「シュクルヴァン」です。その背景について、掛水氏は次のように語ります。
「当社はこれまで新聞折り込みチラシをメインに販促活動を行ってきました。どのブランドでも年に6回ほどセールイベントに合わせて新聞折り込みチラシを配布してきたのですが、新聞の購読率は年々下がり続けており、“まったく新聞を読まない”という若年層の方も増えている中で、費用対効果が見込めなくなってきました。
そこで、老若男女問わず日常的に使っているLINEに注目し、2年ほど前から6店舗で本格的にLINE公式アカウントを運用しています。とりわけベーカリー形態のシュクルヴァンは、他の2ブランドと比べて来店客数が多いため、友だちを集めやすく、メッセージ配信による集客効果を高められるのではないかと期待していました」
シュクルヴァンでは店舗ごとにLINE公式アカウントを開設し、本部で一括して運用。各店舗のセールイベントの情報発信、割引クーポンの配布など、週に1回を目安にメッセージの一斉配信をしています。
「6店舗合わせた友だち数は2.2万人程度で、もっとも多い下松店が約6,500人です(2025年8月時点)。これまで下松店の商圏では新聞折り込みチラシを毎回4万部ほど配布していましたが、友だち数が1万人を達成できたら、配布部数の削減を検討しています。シュクルヴァンは来店客の約8割を女性が占め、新聞を購読されている40~60代のお客さまのご利用も多いため、完全に折り込みチラシを止めることはできませんが、徐々に紙のチラシからLINE公式アカウントへとシフトしていく方針です。間違いなく費用対効果は、新聞折り込みチラシよりLINE公式アカウントのほうが良いと思います」
「友だち紹介クーポン」と「友だち追加用QRコードのレシート印字」で友だち数が大幅増
シュクルヴァンのLINE公式アカウントの友だち数は、2024年末時点で、6店舗合わせて2万人に届いていませんでした。しかし、2025年に入って友だち数が急増しています。この躍進を支えている取り組みが、大きく2つあります。
一つは、LINE公式アカウントの「友だち紹介クーポン」の活用です。「友だち紹介クーポン」は、クーポンを受け取ったユーザーが、クーポンの紹介ページをほかのユーザーに共有し、そのユーザーがLINE公式アカウントの友だち追加をすると、「紹介した人」と「紹介された人」の両者がクーポンを獲得できるという機能です。
シュクルヴァンでは、2025年1月20日から2月16日にかけて「友だち紹介クーポン」を配布。その期間内で新規友だち追加したユーザーの約半数が「友だち紹介クーポン」経由でした。さらに、そのうちの約3割が実際に来店し、獲得したクーポンを利用したのです。
「実は、実施前はクーポンほしさに友だち追加をして、すぐにブロックするユーザーが多いのではないかと思っていました。しかし実際はそんなことはなく、ある店舗では、友だち紹介クーポン経由で友だち追加したユーザーのブロック率が、店舗で友だち追加したユーザーの4分の1程度と低い数値を記録しています。これまで店舗に足を運んでいただいたことのないお客さまに、既存の友だち経由で自動的に友だち追加を促せるのが友だち紹介クーポンのすごいところです。今後も定期的に実施していきたいと思います」
さらに掛水氏は成果につながった理由として、「期間中、友だち紹介クーポンの利用を促すリマインド配信を定期的に行ったことも好結果の要因だと思う」と振り返ります。リマインド配信後の数日間は、友だち追加数やクーポン利用率が着実に伸びるため、シュクルヴァンでは施策実施期間中、1週間に1回程度のペースでリマインド配信を行いました。
そして、友だち追加を加速させているもう一つの施策が、「友だち追加用QRコードのレシート印字」です。
「ベーカリーという業態上、通勤前やランチタイムに急ぎ足で利用されるお客さまが多く、店頭で友だち追加のお声がけをするタイミングがなかなか得られないのが課題でした。そこで、LINE公式アカウントの友だち追加用QRコードをレシートに印字することにしたのです。これにより、お客さまの任意のタイミングで友だち追加をしてもらえるようになりました。店舗滞在時間が特に短い駅ナカ店などで、大きな成果を上げています」
実際、2025年4月に6店舗で導入したところ、4~6月の3カ月で友だち追加数の37%がレシートに印字されたQRコード経由で友だち追加していることが分かりました。
さらに、4~6月の3カ月で、6店舗合わせて平均365人がレシートQRコード経由で友だち追加していることが分かりました。レシートにQRコードを印字した初速のみではなく、継続して友だちが集められています。
また、山陽新幹線の停車駅でもある「新山口駅店」では、施策を始めた2025年4月と実施前を比較すると1カ月の友だち追加数が約5倍になるなど、大きな成果を上げています。
「レシートのQRコード経由で友だち追加していただいたユーザーというのは、実際に店舗を利用し、シュクルヴァンの商品やサービスに満足いただいたお客さまですから、ロイヤルカスタマーになっていただける可能性も大いにあります。そのためブロックされる心配も少なく、メッセージ配信の効果も高まると思います。店舗スタッフに負荷をかけることなく、自動的に友だち追加を促せる施策なので、今後も継続していきます」
ショップカードの導入で効果的にリピーターを獲得
「友だち紹介クーポン」と「QRコードのレシート印字」で質の高い友だちを効率的に集客しているシュクルヴァン。リピート利用を促進するため、2025年5月からLINE公式アカウントのショップカード機能も活用しています。
「500円(税込)お買い上げごとに1ポイントが付与され、10ポイント貯めると300円引きクーポンがもらえるという仕組みです。ショップカードの利用率を高めるために、リッチメニューの全面を使ってショップカードの取得を促すボタンを設置しました。さらにリマインド配信を定期的に行うことで、着実に成果を上げています。利用開始から約2カ月でカードの取得率は6店舗合わせて25%を超えており(2025年8月時点)、実際に店頭に立ってみると、日を追うごとに利用率が高まっているのを感じます。リピーターの獲得に確実につながっていると思いますから、今後もリマインド配信を定期的に行い、カード取得率の向上をめざします。ポイントの付与率や特典を検討しながら、今後もショップカード機能は継続的に利用していくつもりです」
定期的なリマインド配信によって、それぞれの施策の効果を着実に高めているシュクルヴァン。最後に今後のLINE公式アカウント活用の展望について伺いました。
「現在、セールやキャンペーン情報を配信する際は、その数字を目立たせるために1画面に画像が大きく表示されるリッチメッセージを使用しています。一方、季節ものの商品を多数紹介したい場合などは、複数の画像を横にスライドできるカードタイプメッセージを使用しています。ある程度の友だち数を集客できたので、今後はこうしたメッセージ形式の選択だけでなく、購買履歴に基づく配信ターゲットの絞り込みなど、より配信効果を高めるための工夫を行っていく予定です。
配信後のアクションにつながりやすい、即時性に優れたLINE公式アカウントを今後も活用し、リピート利用を増やして売り上げアップを実現したいと思います」
(公開:2025年9月、取材・文/相澤良晃)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です
| 企業名 | あさひ製菓株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 山口県柳井市
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| 事業内容 | 和洋菓子製造販売 他
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| サービス | Shuklevain(シュクルヴァン) |