1938年創業の和菓子店「亀屋万年堂」は、2023年にLINEミニアプリのデジタル会員証を導入しました。従来の「紙のスタンプカード」に愛着を感じていた常連客も多いなか、スムーズにデジタル会員証への移行ができ、購買データの活用も加速しています。その成功の秘訣と、LINEミニアプリだからこそできた「会員ランク制度」や「スクラッチ」などの施策の成果について、マーケティング部 販売促進企画課の斎藤彩子氏(以下、斎藤氏)と辻 梨氏(以下、辻氏)に話を聞きました。
- アナログ会員証を廃止し、顧客がスムーズにデジタル会員証へ移行できるようにしたい
- 顧客理解を深め、つながりを強化し継続的な来店を促したい
- 顧客一人ひとりに合わせた継続的なアプローチをしたい
- 2023年紙の会員証を廃止、LINEミニアプリによるデジタル会員証を導入
- 2025年ランクに応じて特典やサービスを付与する会員ランク制度を導入
- 誕生日クーポンやスクラッチ施策を展開
- 店舗スタッフによる丁寧なサポートとマニュアル作成で紙会員証からの移行を促進
- 会員登録数は約10万人
- 誕生日クーポン利用率は40%超の月も(ブロンズ会員以上)
- スクラッチ施策の月間利用回数約1.3万回
- 30〜50代の会員登録が進展
紙の会員証からLINEミニアプリへ
移行を決断した理由
東京・自由が丘に本店を構える亀屋万年堂は、1938年創業の和菓子店です。看板商品は、1963年から販売している「ナボナ」。創業者の和菓子職人・引地末治氏がヨーロッパを旅した際、現地の菓子文化に感銘を受け、「和菓子の感性を活かしながら、洋菓子の楽しさにあふれた商品を創りたい」という思いで生み出した逸品です。
亀屋万年堂は伝統的な和菓子の味を守りながら、創作的な洋菓子の開発にも積極的に取り組み、新たなファンを増やし続けています。東京と神奈川に15店舗を展開(2026年6月時点)するほか、オンラインショップを通じて全国へ商品を届けています。
同社は、2023年に紙のスタンプカードを廃止し、LINEミニアプリのデジタル会員証を導入しました。その背景には「お客さまの実像が見えていなかった」という課題がありました。従来はPOSで商品ごとの売り上げは把握できても「誰が、いつ、何を購入しているのか」といった顧客情報までは把握できず、一人ひとりに合わせたアプローチが難しかったといいます。
斎藤氏は次のように明かします。
「長年、チラシやDMなどのアナログな手法で販促活動を行ってきましたが、近年は、デジタルツールを活用したダイレクトマーケティングにも注力しています。その取り組みの第一歩として、全店舗にスマレジを導入しました。さらに、顧客とのつながりを強化し、効果的に再来店を促すため、スマレジとスムーズにデータ連携ができるLINEミニアプリの会員証を導入したのです」(斎藤氏)
亀屋万年堂では、ビートレンド株式会社が提供するCRMプラットフォーム「betrend」を活用し、LINEミニアプリのデジタル会員証を実装しています。
従来の紙のスタンプカードは、500円購入ごとにスタンプが1つ押され、20個溜まると「300円割引」を受けられる仕組みでした。また住所や氏名などの個人情報を登録すると別途、紙の「会員さまカード」が発行され、さらに還元率がアップするという仕組みだったといいます。
「デジタル化にあたっては、自社アプリの導入も検討しましたが、やはり相応のコストがかかってしまいます。何より、“新たにアプリをダウンロードしてもらう”というハードルが高く、とりわけ高齢のお客さまにはご利用いただけないと判断しました。その点、LINEミニアプリは、LINEユーザーであれば新規アプリのダウンロードが必要ありません。紙からスムーズに移行してもらえるのではないかと思いました」(斎藤氏)
また、辻氏は「LINE公式アカウントを通じてお客さまと継続的にコミュニケーションできる点も大きかった」と振り返ります。
「やはりアナログの会員証だと、POSで取得した購買データと会員情報を紐づけることが難しく、具体的な販促施策を打てないのが問題でした。蓄積されたデータを活用し、和菓子にとって重要な“季節感”や“食べ頃”の情報をお客さまにきちんと届けていくこと。お客さまと永続的な関係性を構築し、亀屋万年堂のファンになってもらうこと。こうしたコミュニケーションをLINE公式アカウントで行っていくことを見据え、自然に友だち追加が促せるLINEミニアプリに会員証を移行することにしました」(辻氏)
亀屋万年堂はLINEミニアプリを採用
「会員ランク制度」の導入により、再来店率がアップ!
LINEミニアプリの会員証導入にともない、同社では会員制度そのものを見直しました。
「まずインセンティブをスタンプ式からポイント還元式に変更し、お会計金額100円ごとに1ポイントの付与としました。たまったポイントは、1ポイント=1円として次回以降の精算時にご利用いただけます。従来は、単純計算で購入金額の5%という高還元率で、さらにカードやスタンプといった資材のストックも必要でした。今回、デジタル化によって、そうしたコストを削減できたことも大きかったですね」(辻氏)
そして運用開始から2年が経った2025年10月には、新たに「会員ランク制度」を導入しました。これは年間の累計購入金額によって、会員を「レギュラー」「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」の4ランクに分け、そのランクに応じて特典やサービスを付与するというものです。
「例えば還元率は、ランクが上がるごとに1%アップし、最高ランクのゴールドだと100円購入につき4ポイント付与されます。さらに毎月15日の『お菓子の日』は、ポイント10倍です。やはり高ランクの会員さまほど『お菓子の日』の来店率が高く、ランク制度導入後はリピート率の向上を実感しています。POSのデータを活用した施策が、確実にロイヤルティーの向上につながっています」(辻氏)
また、会員ランク制度によって店舗ごとの特徴も見えるようになりました。郊外店では上位ランク会員の比率が高く、駅前店ではレギュラー会員の比率が高いなど、立地ごとの違いを把握できるようになったといいます。
さらにLINEミニアプリの導入により、「誕生日クーポン」や「スクラッチ」といった施策も簡単に実施できるようになりました。「誕生日クーポン」は、ユーザーの誕生日が近づくとLINE公式アカウント上で配布するクーポンです。ブロンズ以上の優良会員では、「40%以上の利用率の月もある」といいます。
一方、「スクラッチ」は毎月20日に実施しており、ユーザーはLINEミニアプリのボタンをタップするだけで参加できます。最大100ポイントが付与されることもあり、2026年2月には、月間利用回数が約1万3000回を記録しました。
「2026年1月、スクラッチは1000回程度の利用でしたが、LINE公式アカウントでスクラッチの日を配信したところ、翌月には13倍になりました。他にも、毎月限定の『季節の大福』の情報も定期的に配信していて、その開封率も高水準です」(斎藤氏)
会員数10万人目前
全店舗で進めたデジタル移行
LINEミニアプリ会員証の導入から3年近くが経過した2026年7月現在、会員登録数は10万人に迫る勢いで、紙時代の登録者数を超えました。
「紙のスタンプカードは30~40年の歴史がありましたが、その間にお名前や住所などの個人情報を取得できたのは7万人。その情報に基づいて、定期的に商品情報のDMを郵送していましたが、毎回、どれほどの効果があるのか不透明な部分がありました。いまはデジタル化のおかげで配信効果を分析しながら情報を届けることができます。もともと当社のメイン顧客は60歳以上の高齢者だったのですが、LINEというコミュニケーションアプリのおかげで、30~50代のお客さまも会員になっていただいています」(辻氏)
LINEミニアプリの会員証の導入で、確実な成果をあげている亀屋万年堂。あらためて、その成功のポイントについて伺いました。
「一番は、スムーズに紙のスタンプカードからLINEミニアプリに移行してもらえたことだと思います。とくに高齢のお客さまの負担を軽減するため、スタッフによる丁寧な呼びかけとサポートを徹底。レジ横のPOPからQRコードへ誘導するオペレーションを全店一丸となって実施しました。お急ぎのお客さまには、QRコード付きのチラシをお渡しして、後日の登録を依頼。Webサイトやイベント時でもデジタル会員証への移行を呼びかけるなど、地道な取り組みが実を結んだと感じています。
また、登録時のつまずきポイントや想定されるトラブルをまとめた店舗向けマニュアルを整備した結果、全店舗で同じ品質の案内ができるよう体制を整えたことも、スムーズな移行につながりました。
導入前は個人情報をデジタルツールで扱うことに抵抗を覚えるお客さまもいるのではないかと心配していました。しかし実際は、そうした声がお客さまから上がることはありませんでした。日常的に利用されているコミュニケーションアプリ「LINE」の親和性とお店への信頼感があったからこそだと思います。70~80代の高齢者のお客さまにも、問題なくお使いいただいています」(辻氏)
最後に今後の展望について伺いました。
「会員ランクが上がれば、リピート率とLTV(顧客生涯価値)が上がるという分析結果も出ていますので、今後もLINEミニアプリを活用してナーチャリングを行い、シルバーとゴールド会員の割合を増やしていきたいですね。顧客情報と購買データの蓄積・分析を続け、商品開発にも生かしていきたいと思います」(斎藤氏)
今回紹介した「LINEミニアプリ」を活用したデジタル会員証について詳しく知りたい方は「LINEミニアプリ 会員証スタートガイド」をぜひご確認ください。(PDF資料・無料)
本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
本記事内の実績は取材先調べによる数値です
(公開:2026年7月、取材・文/相澤良晃)