ペットと共に過ごすエンタメモールの店舗DX〜完全キャッシュレス化とLINEモバイルオーダーで、充実した利用者体験を実現
左から株式会社チューズモンスター 山本 直史氏 / 株式会社antiqua 久保 佑月氏 / LINEヤフー株式会社 下位 健介
大阪府岸和田市にあるWHATAWONは「世界基準の今までにないオシャレでみんなが楽しめる」をコンセプトにした滞在型エンターテインメントモールです。完全キャッシュレス対応や、フードコートにおける完全モバイルオーダーなど、施設運営における先進的なDXでも注目を集めています。WHATAWONは利用者に充実した体験を提供するために、LINEをどのように活用しているのでしょうか。施設を運営する株式会社antiqua 久保 佑月氏、開発を担当する株式会社チューズモンスター 山本 直史氏にお話を伺いました。聞き手は、LINEヤフー株式会社 下位 健介が務めます。
ペットとの時間を邪魔しない 完全キャッシュレス施設の挑戦
下位:WHATAWONとはどのような施設なのか、コンセプトを含めて詳しく教えてください。
久保氏:WHATAWON は、株式会社antiquaが運営するペット同伴OKの海外型モールです。最大の特徴は、ペットと一緒にお食事やお買い物を楽しめる点です。ペットと過ごす時間を大切にしたい方々のために、ペット同伴で入れる飲食店やショップを多数揃えています。お客様の中には、犬や猫だけでなく、亀やアヒルといった珍しいペットを連れてくる方もいます。さらに休日には様々なイベントも開催され、連日多くのお客様で賑わっています。
下位:施設の運営面で特徴的だと感じたのが、完全キャッシュレス化です。他の施設と比べて、DXが進んでいるのが印象的ですが、導入の背景を教えてください。
久保氏:お客様にストレスのない自由な時間を過ごしてほしいという思いから、完全キャッシュレス化に踏み切りました。財布を出さずに、スマホ一つでお買い物ができることで、よりスムーズに施設を楽しめるようになり、特にペット連れやお子さま連れのお客様から好評を得ています。 運営側としても、現金を扱わないことでトラブルの減少やセキュリティ面の強化、さらに店舗の締め作業の工数削減なども実現できています。
下位:一方で、高齢者の方など、デジタルに不慣れな方への対応はいかがですか。
久保氏:確かにスマホが苦手なお客様もいますが、丁寧に説明することで、お客様とのコミュニケーションも深まっています。今後キャッシュレスがますます普及することを説明すると、「不安が解消された」「私でも使えそう」という声も頂くようになりました。
下位:完全キャッシュレス化の際に感じていた課題や不安な点などはありましたか。
久保氏:スタッフの中でも現金決済派や、キャッシュレスに詳しくない者もいたため、スタッフ教育を同時並行で行う必要がありました。スタッフがしっかり理解していないとお客様にも説明できないので、スタッフの知識向上は大前提でした。現在はマニュアルも整備されて、問題なく運用できています。
誰でも使えることを重視したLINEモバイルオーダー導入
下位:WHATAWONのフードコートではLINEモバイルオーダーを導入していますが、LINEを選択した理由を教えてください。
久保氏:フードコートの混雑や待ち時間を減らし、お客様がより快適に過ごせるようにするため、席にいながら注文や決済ができる仕組みを作りたいと強く思っておりました。
モバイルオーダーができるソリューションを探した結果、株式会社チューズモンスターが開発するLINEモバイルオーダーを導入することになりました。LINEは誰もがスマホにインストールしているアプリで、使いやすくて、若年層から高齢者まで、年代を問わず誰もが使えます。またLINEミニアプリは、ネイティブアプリのダウンロードが不要で、一度注文した後の追加注文がしやすいというメリットもあります。
LINEと連携することで、利用客へのモバイルオーダーの浸透がスムーズになると考えました。
下位:WHATAWONでは、利用者はどのような流れでモバイルオーダーをするのでしょうか。スムーズに受け入れられるために工夫した点などがあれば、合わせて教えてください。
久保氏:フードコート内のQRコードを読み込むと、店舗マップのページが表示されます。そこから、オーダーしたいお店を選択すると、各店舗のLINEミニアプリに遷移します。
工夫点としては、お客様がモバイルオーダーにたどり着きやすいよう、見やすい場所にQRコードを貼ることを心がけています。完全キャッシュレスかつモバイルオーダーによる注文スタイルですが、案内表示やスタッフのサポートを通じて、幅広い年代のお客様に自然に受け入れられています。
下位:確かにフードコートには、至る所にQRコードが貼ってありますね。これなら、利用者が迷うことなくモバイルオーダーにたどり着けます。スムーズな浸透には、各店舗のオペレーション管理も重要だと思うのですが、どのように行っていますか。
久保氏:まず弊社から施設の担当者向けに、基本的な使い方について研修を行い、その後、各店舗スタッフへ展開する流れです。多少工数はかかりますが、運営側が正確な知識を持つことで、万が一トラブルが発生した際にも状況を把握しやすくなります。お客様体験を充実させるには、スタッフ教育は不可欠です。
現場の要望に応える丁寧な作り込み
下位:ここからは開発会社のチューズモンスターへの質問です。モバイルオーダーシステムの開発にあたって、工夫した点やこだわりはありますか。
山本氏:元々はテイクアウト用のシステムだったのですが、店内飲食にも対応できるように改造しました。店内かテイクアウトかによって税率を自動で変更する機能なども追加しています。その他、WHATAWONへの導入にあたり、かなり作り込んで開発をしました。
久保氏:例えば、元々システムでは、テイクアウトがイートインより先に表示されていました。しかしWHATAWONのフードコートは、お店によってはテイクアウトもありますが、基本的にはイートインが主体です。
注文の際、誤ってテイクアウトを選んでしまうことが頻繁にあったので、押し間違えないように、イートインとテイクアウトの表示順を左右逆にしてほしいと要望しました。
山本氏:弊社のシステムは、元々がテイクアウト用だったので、イートイン主体にするには、データ構造の変更など、大掛かりな改修が必要でした。その他にも、品切れ品の表示や、PayPayなど決済の履歴が見れる機能、また店舗に設置されているモニターでも待ち順番が分かる機能などを開発しました。
久保氏:お客様のニーズが多岐にわたるので、様々な要望を出しましたが、山本さんをはじめチューズモンスターの皆さんがしっかりと期待に応えてくれたおかげで、今の形になりました。
下位:現場からの様々なフィードバックを取り入れることで、使いやすいシステムになったのですね。WHATAWONからの要望を受けて開発する際の判断基準などはありますか。
山本氏:WHATAWONに限らず、基本的な方向性として、弊社やLINEが目指す体験と合致しているかを重視しています。
例えば、ある店舗では数量を右側に印刷するよう要望があったかと思えば、別の店舗では左側に印刷してほしいと要望が寄せられることもあります。様々なご要望がある中で、最終的には、その変更が他のお客様にとっても有用か、そして私たちの目指す利用者体験と合致しているかという2点を基準に、バランスを考慮しながら進めています。
下位:今回のプロジェクトで、開発面で難しかったことはありますか。
山本氏:開発の大半はリモートで進めていたので、プリンターの設定など、実際に現地に行かないと確認できないことがたくさんありました。また関係者が多かったので、弊社主導で仕様の提案を行う際に、誰に何を伝えればよいのか迷ってしまったのも難しかった点です。ただ、antiquaをはじめ関係者の多大な協力のおかげで、それらの課題を一つずつクリアしていきました。
下位:LINEモバイルオーダーについて、今後の開発計画があれば教えてください。
山本氏:今、課題に感じていることは、通知周りの改善です。利用者がLINEの通知に気付かない場合、現在はスタッフが声をかけて呼び出していますが、LINE APIの制限を踏まえたうえで、利用者に再通知できる機能を実現できないか検討しています。
また、呼び出しの際にWHATAWONの公式アカウントと店舗のLINEミニアプリのどちらから通知が届くのかが分かりづらいという声も寄せられています。そこで現在、注文完了画面に新たな案内ページを追加することで、どの店舗からの通知か分かりやすくする作業を進めています。
久保氏:確かに、通知しても取りに来ない方への呼びかけは、スタッフ側でも課題に感じています。また現状は、モバイルオーダーとLINE公式アカウントとの違いを、スタッフ側で丁寧に説明しています。こうした課題に気付いて、システム側で対応して頂けるのはとても助かります。
下位:今回のWHATAWONへの導入にあたって得た知見や、追加開発した機能を、他の導入先へも展開していく計画はありますか。
山本氏:WHATAWONが採用している決済システムにも対応したので、これをきっかけに他の導入施設でも決済の選択肢を広げていこうと考えています。また弊社のモバイルオーダーは、実はLINEヤフーの社員食堂でも採用されています。これらの事例を生かして、今後社食やカフェなど、さらに導入先を増やしていきたいと考えています。
誰も取り残さないことがデジタル活用成功の秘訣
下位:WHATAWONの今後の展望についてお伺いします。完全キャッシュレスに続いて、LINEを通じて実現したいアイディアがあればお聞かせください。
久保氏:現在検討しているのは、再来店を促進する要素を取り入れることです。例えば、LINEミニアプリの機能を活用し、月に一度クーポンが当たるようなゲーム要素を導入したり、お客様にパーソナライズされたメリットを提供できるような仕組みも導入していきたいと考えています。
下位:LINEミニアプリは、利用者とのつながりを深める上で有効なツールです。LINE公式アカウントと連携させることで、休日に開催されるイベントの告知力を高めたり、再来店を促す施策にもつなげることができます。モバイルオーダー以外にも多様な活用法があるので、ぜひお気軽にご相談ください。
最後にWHATAWONの成功事例を踏まえて、他施設がDXに挑戦する際のアドバイスをお願いできますか。
久保氏:大阪万博でもキャッシュレスを推進しているなど、キャッシュレス決済は着実に普及しています。今はキャッシュレスを導入しやすい時期ではないでしょうか。ただ、最も重要なのは、お客様にとっての使いやすさです。WHATAWONでは、デジタルに不慣れな方へのサポートを積極的に行うとともに、誰もが慣れ親しんだツールを採用することで、お客様が戸惑わないよう常に配慮しています。全員が利用できるサービス提供を最優先に考慮すべきだと思います。
下位:完全キャッシュレスによる施設運営やモバイルオーダーシステムの導入など、WHATAWONの取り組みは参考になる点が多いですね。システムからスタッフ教育まで、一気通貫で顧客体験を作り込むことが、WHATAWON利用者からの好評にもつながっていると感じました。本日はありがとうございました!
(取材日: 2025年7月7日: 取材/大場 沙里奈, 鍋島理人)
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