ワンクリックで実現するAI農業:自動化の力で変わる農業の景色
左から株式会社ゼンアーキテクツ 三宅和之氏 / AGRIST株式会社 清水秀樹氏 / 株式会社ゼンアーキテクツ 芝村達郎氏、横浜篤氏
人手不足、気候変動、フードロスなど、農業に関する課題に対する解決策として、AIやロボット技術の活用が注目を集めています。その中でも、AGRIST株式会社は自動で収穫するロボットを開発し、持続可能な農業を実現するスタートアップ企業です。この次世代農業の取り組みは、作物の状態をAIが識別し、効率的な収穫を実現することで、農業の未来に新たな可能性を切り開いています。今回はAGRIST株式会社のVice President of Engineeringである清水秀樹氏と、技術支援を行う株式会社ゼンアーキテクツの三宅和之氏、芝村達郎氏、横浜篤氏に、AIと農業のこれからについてお話を伺いました。聞き手はLINEヤフー株式会社の河本貴史が務めます。
世界の農業課題を解決する、AGRISTの取り組みとは
清水氏:私たちは「農業の未来をデザインする」ことを目指しています。農業のイメージを変え、より多くの人々が農業に興味を持ち、参加できる世界を作りたいと思っています。
河本:AGRIST株式会社が設立された発端について教えていただけますか?
清水氏:私たちの代表が宮崎で行っていた、1粒ライチを1個1000円で販売するビジネスを通じて農家の方々と関わりを持つようになりました。その中で農家の方々から度々人手不足の相談を受け、ロボットが必要だと感じたことが設立のきっかけです。2019年にその収穫ロボットの開発を始め、2021年からはスマート農業へと事業をシフトしました。
河本:それは具体的にどのような事業なのでしょうか?
清水氏:スマート農業とは、ビニールハウスとロボットをセットで販売し、農業の効率化を図る事業です。ビニールハウス自体が一体化したシステムとなり、ロボットやセンシング技術などを組み込んだ最先端の農業を提供しています。
河本:それは非常に先進的な取り組みですね。
清水氏:ありがとうございます。私たちの目指すのは、誰でも使いやすい、そして効果が出るテクノロジーを活用した農業です。説明書を見なくても、経験者でなくても、誰でも最適な農業をワンクリックで営むことができる世界を目指しています。
例えば、これから営農を始めたい方向けに、地図を見て空いている土地をターゲットにし、その地域の気候による収穫量を数値で予測して提案するという取り組みが可能です。さらに、金融業界の企業と連携し、空いている土地をワンクリックすれば、その場でローンの審査に進むようなシステムも実現できる段階にあります。加えて、流通に関しても考慮しており、大手小売業者との連携を通じて、収穫された製品の出荷先とのシームレスなつながりを目指しています。これらの計画はまだ具体的に実現されてはいませんが、私たちはその可能性を積極的に追求していくつもりです。
河本:これまでお話しいただいた先進的な取り組みに基づき、今後の展望について教えてください。
清水氏:私たちのサービスが広く導入され大量のデータが得られることにより、より信頼性の高い分析データが取得できます。この分析データを活用すれば、地域別にどの時期にどれだけ作物を作ると需要と供給のバランスがとれるかといった事などがわかり、より効率的な農業が可能となります。
河本:それは、農業とデータ分析の結びつきが新たな価値を生み出すということですね。
清水氏:その通りです。私たちのサービスが広まれば広まるほど、その効果は大きくなるでしょう。そして、その結果を通じて、農業のあり方そのものが変わる世界を目指しています。
誰でも農業ができる時代へ、AGRISTのワンクリック農業戦略
清水氏:私たちが最も重視しているのは、ロボットやチャットなどではなく、データです。私たちの周りはデータで溢れており、農作物を育てるビニールハウス内も例外ではありません。温度や湿度など、ビニールハウス内には様々なデータが存在しています。
芝村氏:確かに以前、ビニールハウス内で取得したデータを見せていただきましたが、温度や湿度など、本当に多種多様なデータを取得していましたね。
清水氏:そうです。私たちはそのようなデータを全てクラウド上に上げ、後でさまざまな用途で利用していきます。
三宅氏:生成AIは、取得したデータを特に加工・フォーマットせず、またデータ項目を説明しなくても、温度や湿度のデータを見分けることができましたね。
清水氏:私たちは当初、雑に生成AIにデータを与えてみるという試みから始めましたが、予想外にも生成AIは雑多な状態のデータを解釈してくれました。この発見は非常にラッキーでした。データ構造を理解できるんだなと。
横浜氏:生成AIは主に文章の生成や会話文の生成に注目が集まりがちですが、こういった雑なデータを与えて、その内容を簡単に解釈して返してくれるという用途も非常に便利です。
河本:生成AIに欲しいものを作成させることに注力しがちですが、このようなインプット力というのも大きなメリットかもしれませんね。現状のAIのアウトプットをコントロールするのは難しいと思いますので、インプットをカジュアルに、アウトプットはシンプルなものを要求するというのはAIの活用の仕方としてとても良さそうです。
三宅氏:そうですね、我々も清水さんと一緒にプロジェクトを進めていく中で、色々と気づくことができました。
芝村氏:プログラミングやシステムに精通している人ほど、試す前に「これは無理だろう」と思い込みがちですが、最近のAIは我々の常識を簡単に超えてきます。
河本:たしかにIoT的なデータで生成AIを使うような活用事例は今のところあまり見ないかもしれません。
横浜氏:私たちも生成AIを活用するようになってから、考え方が大きく変わりました。固定概念にとらわれない考え方にシフトしています。生成AIの可能性はまだまだ広がっています。
清水氏:センシングから得られたデータを可視化するようなツールは世の中にいっぱいあるんです、しかしそういった可視化されたものってベテランの人じゃないと見ても活用しきれない、経験などに依存してしまう。そうではなく例えば「良い」か「悪い」かという「判断」を教えてほしいというのが本音です。
今の生成AIは世の中のデータを結構学習していますので一般的な判断力はある状態です。自前の農場シュチュエーションに合わせたかったら自前の農場のデータをプロンプト入力によって追加であたえるなどしてさらに判断力のチューニングもできます。
私たちが提供するワンクリック農業サービスを使い続けることで、自前のデータを日々蓄積し、生成AIの判断力はますます向上していきます。そのためユーザーはあまり難しいことを考えずにAIがレコメンドしてくれた内容にそって、アクションボタンをポチポチとワンクリックでどんどん進めて営農が出来るようになります。
横浜氏:今年はMicrosoft のBingもAIをフル活用して現在画像もまじえて解釈ができるようになっています、これからマルチモーダルなどAIの展開はまだまだ面白くなっていきますよ。
ユーザー向けサービスの最適解、LINE活用で生み出されるスピード感
三宅氏:ユーザー向けのサービスのインタフェースを一から作るのは時間がかかります。大量の資金を投じてフロント部分をゼロから構築するのは、効率が悪いです。
芝村氏:さらにユーザー向けのサービスは、サポートから何まで非常に大変ですからね。例えば、顧客サポートは商品に関する問い合わせ処理等、幅広い要求に迅速かつ効果的に対応する必要があります。スマートフォンアプリの開発においては使い勝手や機能要望等、製品の品質向上のため、多岐にわたるフィードバックを考慮する必要がある分、時間とコスト面で課題があります。
アイデアと迅速なリリースは、競争の激しいビジネス環境において成功を決定づける鍵になります。特にその成功にはユーザーインターフェースの使いやすさが大きく依存していると考えます。 利用者にとっては、 LINEはアプリを開くだけでログインが可能で、追加のアプリダウンロードが不要な点で、ユーザーフレンドリーで気軽に利用を開始することができます。 サービス提供者にとっては、フロントエンドに特化したLINEを活用し、UIの開発にかかる時間と労力を節約し、より機能面の開発に集中することができます。加えて、知名度があること、そして日本語で利用できることなどが大きなメリットだと感じます。日本においてLINE以外の選択肢がほぼ存在しないと言えますね。
清水氏:「あぐりすたんと」はまさにその象徴です。LINEやMicrosoftなどの優れたテクノロジーを最大限に活用し、固有のデータなどを組み合わせてスピード感のあるサービスリリースを実現しました。
LINEを活用した農業サービスの新機軸 - 「あぐりすたんとPlus(仮)」の展望
清水氏:私たちのサービスはセンサーやロボットなどが組み込まれているため、全体の構築には時間がかかりますが、LINE公式アカウントと簡易的なセンサーを使った提供についてはスピーディに実現できると考えています。さらに、課金の仕組みについても検討しています。
河本:LINEだからといって決済がLINE Payだけに限定されるというわけではありません。Stripeを活用してクレジットカード決済を組み込むことも可能です。
清水氏:決済の仕組みが整えば、ユーザー向けのサービスを企業向けよりも軽量化し、迅速に提供できると考えています。農業は家族経営も多く、BtoCの比率が高いため、LINE公式アカウントを活用したBtoC展開には大きな可能性があると思っています。ライトなプランから充実したプランまで、充実したラインナップを用意していくことを検討しています。
横浜氏:生成AI技術はまだまだ発展していきますが、その価値を最大に引き出すには、我々が持つ独自のデータが鍵になると思います。
三宅氏:私たちのサービス「Azure Light-up」の利用を通じて生成AIの活用を考えた時、多くの企業様が自社のデータ整備が追いついていないという現状に気づかれます。私たちのサービスがデータの重要性を再認識する良い機会になってそうです。
芝村氏:結論はやはりデータが重要ということになりますね。
清水氏:私たちは「Azure Light-up」を通じてデータの重要性を最初から認識することができました。今非常に状況が良いことから、私たちの進め方が間違っていなかったと確信しています。今後は、LINEの活用をさらに進め、新しいサービス「Plas(仮)」のリリースに向けて取り組んでいきたいと考えています。
(取材日: 2023年9月: 取材/河本貴史, サポート/大場沙里奈, 鈴木敦史)
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